短編

□境界線
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「…み、や………」

「…ん?こわい?」

「ちょっとだけ、ね」


腕の中で微かに震えるももを抱きしめ直す。

これからすることを想像しながら、あたしは狼狽えた。

小さくて小さくて、今にも壊れそうなももを抱くのは簡単そうで難しい。

でも、ももが愛しくて、誰にも渡したくなくて。

自分のものだっていう証が欲しかった。

深呼吸して息を整える。


「もも、大丈夫だよ。少しずつしていこ」

「…ん」

「じゃあ服脱ごっか」


言葉に出してみたら緊張する。

言わなきゃよかった。

ももの上に重なって、ももの服の前のボタンに手をかける。


「みや、手、震えてる」


不安と期待を同時に併せ持ったような表情のももが、少しだけ笑った。

その微笑みが緊張を解す。


「うるさいなぁ、今外すから」


ぷちぷちと、ひとつひとつ片手で外していく。

その度にももの白い肌の露出が広がって。

最後のひとつに手をかけたとき、ももに手首を掴まれた。


「待って」

「ん?」

「…みやも」

「あー…」


後から自分の服も脱ぐつもりだったけど、こうなったら仕方がない。

上体を起こして、Tシャツとキャミソールを一気に脱ぎ捨てた。


「恥ずかしくないの?」

「んー、ちょっと恥ずかしいけど…これからすることのほうが恥ずかしいと思う」

「もう、それ言わないでよ」


少し口を尖らせるもも。

その薄い唇に唇の先だけで触れるようなキスを1回。


「はい、ももちゃんもはやく同じカッコになろうねー」

「むぅ…子供扱い」


ぷちっと最後のボタンを外すと、自然とももが肩をあげる。


「…白いなぁ」


上半身は下着姿のももをまじまじと見つめる。

ももがもぞもぞ動いて、両手で顔を覆った。


「もも、だぁめ」

「だってだって、恥ずかしいじゃん」

「てか顔隠してもあたしが見てるのもものカラダだから」


その言葉で少し手の力が緩んだ気がした。

その瞬間に右腕で、ももの左腕を掴んで引っ張る。

ももの顔が半分見えた。

白い肌が赤みを帯びてる。

その熱に触れたくて、コメカミあたりに唇を寄せる。


「…ねぇ、顔見せてよ」

「だってぇ…」

「はー…わかった」


とりあえずももの柔らかそうな肌にはやく触れたい。

ふわっと優しく抱きしめた。

自分とももの素肌が押しあって、熱を奪い合って。

気持ちいい。

素直にそう感じた。

ももが応えるように首に腕を絡めてくる。

その行為がまた素肌と素肌を引き寄せる。

このまま境界線なんてなくなっちゃえばいいのに。


「みや、なんか溶けちゃいそうだね」

「うん」


ももも同じことを考えてた。

それだけで嬉しくなって、さらに抱きしめる強さを増す。


「もも、あたしね、ももとひとつになりたい」

「うん」

「一緒に気持ちよくなりたい」

「…うん」

「もも、今気持ちいい?」

「…気持ちいい」

「あたしも」

「みや…」

「…ん、もも……」

「……」


キスをしようとももと少し距離をとる。

ももは既に目を閉じていた。

おまけに規則正しい寝息も聞こえる。


…ん?寝息?

さっきまで喋ってたのにもう寝てんの?


「うわぁ、ありえないから…」


この状況で寝落ちとかいい度胸だなぁ。

でも、裏を返せば相当気持ちよかったってことかな。


ももの真っ白くてスベスベの肩に頬を滑らせる。

ほんとに白くて、柔らかくて、気持ちいい。

少しずつ瞼が重くなっていく。


「…もも、おやすみ」


最後の力を振り絞って、もものほっぺにキスを落とした。

それと同時に眠りに落ちる。


幸せな夢の中に吸い込まれていった。




end.

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