短編

□小さな幸せ
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「あれ?ももだけ?」


ガチャッと元気よく楽屋のドアが開いた。


「おはよ。ももだけだよ。みんな今日もギリギリにくるでしょ」

「千奈美もギリギリにくればよかったー」

「ちーちゃんひどいなぁ」


ちーちゃんが入口付近のソファに座った。

ももが座ってるテーブルの椅子からは少し遠い。

文庫本を読みながら盗み見してたらちーちゃんと目が合った。


「もも」

「ん?」

「ん」


ちーちゃんがぽんぽんとソファの自分の横を叩いて、座れと促す。

それだけで口元が緩む。


「えへへ」


本を机の上に放り出してボフッと座ってちーちゃんにぴったりとくっついてみた。


「ちーちゃん珍しく嫌がらないね」

「嫌がろうか?」

「やだ」


自然と手が触れ、ちーちゃんの肌のぬくもりを感じた。


「もも、指短い」

「あー、ちーちゃんひどいんだぁ」


そんなことを言いながらちーちゃんはももの指に自分の指を絡ませる。

ちーちゃんに指先を遊ばれて、それだけでもももの心臓はもううるさい。


「もも」

「んー?」

「珍しく早起きしたから眠い」


確かにとても眠そうなちーちゃん。


「まだ時間あるし少し寝る?」

「うん」


ちーちゃんが寝る場所を空けようとソファから立った。


「…ちーちゃん?」


ちーちゃんによって絡まったももたちの指が解けない。


「座ってて」

「? うん」


よく分からないけどとりあえずもう一度腰掛ける。

すると、ちーちゃんが突然上体をももの方に倒してきた。


「…膝枕だ」

「うん、少しだけ。いい?」

「いーよ」


顔にかかった髪の毛を指で払い、ちーちゃんの横顔を覗き込む。

横目でこっちを見るちーちゃんと目が合った。


「もも」

「ん?」

「…」


ちーちゃんが自分のほっぺを人差し指でとんとんする。

それを見て、ちーちゃんのほっぺにそっとキスを落とす。


「ちーちゃん、おやすみ」

「…ん、おやすみ」


ももとちーちゃんだけの、幸せな時間の始まり。


end.

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