短編

□おふろ
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「もも、もっとこっち寄って」

「無理無理!ほんと無理だから!」

「…はぁ」


ももが嫌がるのも無理はないか。

それに、浴槽の中なんだからもう十分近い。

ももは背中を向けて精いっぱい離れてる。

遠征のために泊まるホテルは一人部屋で、ここはお隣のももの部屋のお風呂。

普段泊まるホテルのお風呂より大きくて、ついはしゃいだ結果がこれ。

ももを強引に脱がせてそのまま自分も入った。

あたしが無理やり誘ったのが悪いんだけど、ここまできたらもっと近づいてくれても…


「もも、なにもしないからさ…」

「嘘だ」

「てゆーか今さら恥ずかしいことなんてないでしょ」

「明るすぎるもん」

「暗かったらいいの?」


ぶんぶんと首を横に振るもも。

真っ暗なお風呂か…

それはそれでいいかも…なんて。


「明日コンサートなんだから変なことしないってば」

「……ホント?」

「ホントだよ。ほら、おいで」


パチャン、と水音を立てて素直に後ろを向いたまま寄ってくるもも。

…可愛いなぁ。


「…もも、いつもより軽い」

「お風呂の中だもん。当たり前でしょ」


自分の足の間にすっぽりとおさまるもも。

髪の毛をアップにしてるもものうなじが目の前にあるのを眺めながら、幸せに浸る。

大好きなお風呂と、大好きなもも。


「もも」

「なに?」

「みや、今すっごい幸せ」

「…もももしあわせ」


普段あまりそういうことを口にしないももに、幸せが大きくなる。

ももの首に腕を巻き付けて抱きしめる。


「…もも」


後ろから耳にちゅっとキスを落とす。


「ふっ、くすぐったいよ」


身体を震わせながら笑うもも。


「もも、好き」

「…うん」


耳元から口を離さず囁くように言った。

その途端にももの耳が一気に熱くなるのがわかった。

そんなももを目の前に耐えられるはずもなく。

なにもしないと言いながら、ちゅぅっと吸い上げてペロッと舐める。


「ん、ちょっとみや…!」

「…なに?」

「なにもしないって言ったくせに」

「なに?これもだめなの?」

「だめに決まってんじゃん!」

「なんで?…もしかして感じちゃった?」

「…バカ!」


ジタバタして浴槽から出ようとするもも。


「もも、暴れないで」

「やだ。みやのバカ」

「可愛いよ、もも。すっごく可愛い」

「……ずるい」


可愛いの一言で大人しくなるもも。


「ね、しよっか?」

「だからダメだってば」

「ももだってほんとは期待してるくせに」

「してないもん」


子供みたいに言うももに、頬の筋肉が緩みまくる。

ももがどんなにダメって言っても、完全にスイッチ入っちゃった。


「もも…」


首にあった腕の一本を少し下にずらして脇腹をさする。


「ひゃっ……!」


ももの声が浴室に響いた。


「みや、ほんとダメだってば…!」

「ん、もう無理。もも可愛いんだもん」


耳を舐める度にももが震える。

経験上、その震えが快感からきているものだと知ってる。


「…もも、かわいー」

「…さっきから可愛いって言いすぎだよ」

「ほんとのことだもん」

「普段は言ってくれないくせに……」

「…もっと言ってあげる」


脇腹にあった腕を徐々に太ももに滑らせる。


「もも、………可愛いよ」

「んっ…み、やぁ…」

「…もも………」


ゆるゆると太ももを撫でると、ももがくたっと全身の体重を預けてきた。


「………もも?」

「……ん」

「…逆上せてる?」

「ちょっと暑い、かも…」

「大変!ごめん、上がろっか」


続きをしたいけど、逆上せさせるのはさすがにまずい。

明日もコンサートだし我慢するか。


「早く上がってお水飲もうね」


ももに言うと、素直に起き上がる。


「みや?」

「ん?」

「……お風呂から出たら…その……」


なんだ、この可愛い生き物は。

でも…


「逆上せてんだから無理しちゃだめ」

「…その気にさせたのはみやなのに。責任とってくれないの……?」


唇をつきだして言うももに、敵うはずがない。


「わかった。覚悟しなよ?」


ふわっと笑うももに、今夜は長くなるなと確信した。





end.

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