短編

□おんなじきもち
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もういい大人になるんだし、そろそろかなぁ。

遠征ライブのために泊まっているホテルのシャワーを浴びながらぼーっと考える。

ももは千奈美を好きで、千奈美もきっと…ももが好き。

いい雰囲気ではあるのにお互い言うタイミングが掴めずにいた。


「…千奈美ももうすぐにゃんにゃん歳だもんね……」


シリアスな口調で全くそうじゃない言葉を口走る。

キュッとシャワーの栓を回して、千奈美の待つ部屋に急いだ。




着替えて部屋を見ると、千奈美はテレビを見ていた。


「あ、もも。このテレビ面白いよ」


振り返らずに言う千奈美の声に少なからずも心臓が跳ねる。

…慣れないなぁ。

ベッドに腰掛けてテレビを見る千奈美の背後から、そっと手を伸ばした。


「…ん、なに?」


ぎゅぅぅって抱きしめるけど、やっぱりももがすると抱きついてるみたい。


「ちーちゃん…」

「んー?」


いつものことかとのほほんとした口調の千奈美。

なんだかそれが悔しくて。


「ちーちゃんのばーか…」

「は?なんだよー」

「もっとドキドキすればいいのに……ももばっかだもん」

「自分から抱きついてきたくせにドキドキしてんの?」


少し馬鹿にした言い方。

千奈美はももの手首を掴んで胸元にあてる。


「…ほら」

「あ…」


千奈美の鼓動が手に伝わる。

すごく速くて、なんていうか…ももと同じくらい。


「へへ、そういうことだよ。ばーか」


ああ、もう。

どうしようもなく千奈美が好き。


「ちーちゃん」

「んん?」

「好きって言ったらどうする?」

「……うーん」

「ねえ、…どうする?」

「…千奈美も好きだよって言う」


後ろからのぞく千奈美のほっぺが真っ赤に染まるのを見て、満足した。




「ちーちゃん…大好き」

「千奈美も大好きだよ」






end.

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