短編

□いつもと違うあなた
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「あー、なんっかうまくできない…」


せっかくのOFFの日なのに、みやは舞台で使うウィッグをつける練習。

あーあ…久々にみやの家に来れたと思ったのに…。


「ねぇ、どう思う?違和感ある?」

「んーまあいいんじゃないかなぁ…」


わざとケータイをいじる手を止めずに少しぶっきらぼうに応える。


「そう?ね、みやイケメン?」


鈍感なみやは、そんなももに気付かずに明るい声。


「イケメンだよ」

「なにその言い方。適当」


チラッと見ただけでさらっと応えたももにさすがのみやも少しカチンときたみたい。

若干申し訳なさを覚えて、顔ごとみやに向ける。

しっかり見ても、みやは本当に男の子みたいだった。

カラコンで瞳の色を変え、ウィッグで短髪になり、さらには本格的な男の子メイク。

自然と胸がとくんと高鳴る。


「…ずるいなぁ」

「は?」


ポツリと出た言葉に反応するみや。


「…だって、男の子になってもそんな綺麗でかっこいいんだもん」

「…じゃあさ、どっちが好き?」

「え?」

「いつものみやと…、男の子のみや」


ずいっと顔を近づけられ、自分の鼓動の音がもっと大きくなった。

心做しか少しハスキーな声で言うみやにゾクゾクする。

もちろん、答えは決まってる。


「そんなの、どっちも好きに決まってんじゃん」


そう言いながら腕をみやの首に絡ませると、腰を支えてくれる。


「もも、最近全然会えなくてごめん」

「舞台のお稽古なんだからしかたないよ」

「…みやがよくない」


そう言いながら肩に顔を埋めるみや。


「ふふ、みや可愛い」

「うっさい。今は可愛いって嬉しくないし」

「なんでー?どんなカッコになってももものみやはすーごく可愛いんだから。ね?」

「…ね?って言われてもなぁ」

「可愛いよ、みや」

「……ん、ももだって可愛い」

「その格好でデレは反則」

「うるせぇ、おまえが可愛すぎるのが悪い」

「甲斐くん口調やめてよ〜(笑)」

「へへ、様になってる?」

「うん、びっくりするくらいかっこいい」

「…もも」

「なぁに?」

「呼んでみただけ」

「ふふっ」


男の子のみやと抱き合うのはなんだか新鮮でくすぐったい。

たまにはいいかな、なんて思っちゃった。


「ねぇ、もっかい甲斐くんやってよ〜」

「…やだ」

「なんで?」

「やってって言われると無理」

「ケチ〜!」

「うるさいなぁ、もう」


言ってくれるのかと思ったらそうじゃなくて、少し体を離して顔を近づけてくるみや。


「…もうしゃべんなくていいよ」

「……みや、はやく」

「うん」





返事と同時に唇が重なった。




end.

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