短編

□11年目もきっと
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「…ちーちゃんそろそろ離してよぉ」

「んー、やだ」


気怠そうに返すと、いつもは逆なのに、なんてももは笑った。

ももが肩を震わせて笑うと、ももの甘い香りが鼻を掠める。


場所は楽屋。

いつ誰がくるか分からない状況で、千奈美は座ってるももに後ろから覆い被さってる。

こんなのメンバーなんかに見られたら完全に千奈美のキャラは崩壊するだろうな…


「ちーちゃんやっぱもものこと好きだぁ」

「………うん」

「えらい素直だねぇ、ほんとどしたの」

「分かんない」

「ふふっ、ちーちゃん可愛い」

「うるさいよ」


千奈美が喋ったらくすぐったいのか、ももが少し身をよじらせた。

それがなんだか可愛くて、うなじにふーっと息をかけてみた。


「…ちーちゃん、もしかして誘ってんの?」

「…そうかも」


そう言うとももが座ったままくるっと後ろを向いた。


「今日のちーちゃん積極的」

「なにそれ、意味分かんない」


至近距離のももは、少し頬が赤い。


「ふふっ もも、桃みたい」

「うわぁ、ちーちゃん面白くなーい」

「うるさいなぁ、ちび」

「ちびって言ったぁ!ちーちゃんのおバカ……」


ムッとしたから口を塞いでやった。


「……ちーちゃんずるい」

「ももが悪い」

「むぅ」

「そんな顔すんな」


もう1回してもいいかなぁ、なんて思ってたらももが顎を突き出してきた。


「……なに?」

「もう1回してってことぉ」

「えー、どうしようかな」

「…いじわる」


ごめんねっていう言葉を飲み込んで、また唇を重ねる。


「んふふ、ちーちゃん大好き」

「…あっそ」

「そこは"千奈美も好きだよ"でしょー?」

「チナミモスキダヨ」

「なんで片言?ちーちゃんのバカ」


本気でいじけモードに入ろうとする可愛いこいつに、またキスしてやろうと顎を捕まえると嬉しそうに大人しく目を閉じる。

千奈美の言動でこうも左右されるももが愛しくて、11年目もきっとこいつを好きなんだろうなと確信した。


キスの前にひとこと。


「もも、千奈美も好きだよ」


目を閉じてて見えなかったけど、ももが嬉しそうに微笑んだ気がした。





end.

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