短編
□イタズラ
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初めはほんのイタズラのつもりだった。
それがこんなことになるなんて。
「佐紀ちゃん…もものこと怒らせてたのしー?」
「…い、いや…」
遡ること数時間前。
ももがイベントの本番前に珍しくあまりにも緊張してるみたいだったから、イタズラしてやろうと思った。
少しでも緊張を解すために。
「もーも!」
「どしたの?」
緊張を顔には出さないように頑張ってるもも。
そんなももの急所…いわゆるアゴを狙って腕を伸ばす。
「うわっ!ちょ、やめてよぉ」
「あはははは」
「もう!佐紀ちゃん!」
もものアゴには見事にピンクの可愛いハートマークのシール。
ももはシールを無言で剥がした。
「佐紀ちゃん?本番終わるの楽しみだね」
やばい。ももの目が笑ってない。
非常にまずい。
本番中は怒った素振りを見せなかったももに、あたしもイタズラのことなんかすっかり忘れてた。
それなのに、本番が終わって衣装から私服に着替えようと更衣室に行ったら…
「佐紀ちゃん、もも忘れてないからね?」
「うっ…」
「ふたりっきりになろうか」
衣装のまま、ももに手を引かれて更衣室を出た。
…嫌な予感しかしない。