氷のように

□十年の歳月 二人の盗賊
1ページ/3ページ



10年後

魔界のある一部で、かなり有名な二人組の盗賊が居た。

「またか…!今日こそは逃がすな!追えぇ!!」

屋敷に響き渡る、激昂を露にした声と、その声に誘導される複数の影
それらを全て受け流すかのように風を切って走るふたつの影

「まぁた来たぞ。……どうする?蔵馬。」

黒の長い髪に黒の切れ長の目。耳はぴんと尖り、背には羽根が生えた青年

整った顔立ちの彼の名は黒鵺

盗賊の家系で育った、鵺の妖怪

その黒鵺がもうひとりに喋りかけた。

銀の長髪に、黄金に輝く目
狐の耳と尻尾を持つ
こちらも整った顔立ちで見目麗しい

蔵馬
黒鵺と共に育った銀色の妖狐

「ふっ、決まっている…このまま突っ切る!」

「そぉこなくっちゃ!」

蔵馬の答えに、黒鵺はわくわくしたように身を震わせる。

出入り口が徐々に狭まって行く。

「黒鵺!」

「おう!」

声を合図に、黒鵺が全速力で出入り口を抜け出る。

抜け出た黒鵺はその場に立ち止まり、その顔は余裕で満たされた顔で蔵馬を振り返れば、彼は自分が持っていた宝を黒鵺目掛けて投げつけた。

体が一気に軽くなった

黒鵺が宝を受け止めたのを認めて、蔵馬は全速力で走り出した。


風を切る様に弧を描き、銀の髪を靡かせる。

出入り口が完全に塞がる寸前、蔵馬は外への脱出に成功したた。

鈍い音を立て、出入り口が塞がる。

難を逃れた蔵馬は一息吐き、黒鵺を顧みた。

「黒鵺、壊してないだろうな。」

鬱陶しげに髪を掻き上げながら、投げた宝の安全を確認する。

「この通り。」

黒鵺の手の中にある宝は傷1つ付いていない。

「よし、じゃあ仕上げといくか。」

宝が無事なのを確認し、蔵馬は指を鳴らした。


+
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ