氷のように
□十年の歳月 二人の盗賊
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10年後
魔界のある一部で、かなり有名な二人組の盗賊が居た。
「またか…!今日こそは逃がすな!追えぇ!!」
屋敷に響き渡る、激昂を露にした声と、その声に誘導される複数の影
それらを全て受け流すかのように風を切って走るふたつの影
「まぁた来たぞ。……どうする?蔵馬。」
黒の長い髪に黒の切れ長の目。耳はぴんと尖り、背には羽根が生えた青年
整った顔立ちの彼の名は黒鵺
盗賊の家系で育った、鵺の妖怪
その黒鵺がもうひとりに喋りかけた。
銀の長髪に、黄金に輝く目
狐の耳と尻尾を持つ
こちらも整った顔立ちで見目麗しい
蔵馬
黒鵺と共に育った銀色の妖狐
「ふっ、決まっている…このまま突っ切る!」
「そぉこなくっちゃ!」
蔵馬の答えに、黒鵺はわくわくしたように身を震わせる。
出入り口が徐々に狭まって行く。
「黒鵺!」
「おう!」
声を合図に、黒鵺が全速力で出入り口を抜け出る。
抜け出た黒鵺はその場に立ち止まり、その顔は余裕で満たされた顔で蔵馬を振り返れば、彼は自分が持っていた宝を黒鵺目掛けて投げつけた。
体が一気に軽くなった
黒鵺が宝を受け止めたのを認めて、蔵馬は全速力で走り出した。
風を切る様に弧を描き、銀の髪を靡かせる。
出入り口が完全に塞がる寸前、蔵馬は外への脱出に成功したた。
鈍い音を立て、出入り口が塞がる。
難を逃れた蔵馬は一息吐き、黒鵺を顧みた。
「黒鵺、壊してないだろうな。」
鬱陶しげに髪を掻き上げながら、投げた宝の安全を確認する。
「この通り。」
黒鵺の手の中にある宝は傷1つ付いていない。
「よし、じゃあ仕上げといくか。」
宝が無事なのを確認し、蔵馬は指を鳴らした。
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