氷のように

□二人の武器 炬昼の正体
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暗闇に捕らわれていた黒鵺の意識が浮上した。
真っ暗な空間。
ねっとりとした重い空気がその場を満たしている。
しかも温い風が死臭と血の臭いを運び、鼻孔を擽り気分が悪い。
喉に込み上げてくる物を呑み込んだ黒鵺は、自分の側で少女が倒れているのに気付いた。
「炬昼!?」
少女の華奢な体を抱き起こし、何度も呼びかける。
「炬昼!炬昼起きろ!!」
そうすると、炬昼の瞼がゆっくりと開いた。
胸を撫で下ろした黒鵺は辺りを見回した。
目が暗闇に慣れて来たらしい。

黒鵺の種族は目がよく効く。
目が慣れれば昼間の様に辺りを見通せるのだ。

そこら辺が死体の山だ。
白骨からミイラ化した者までが転がってる。
それを肌で感じたからか、黒鵺の側に居る炬昼が黒鵺の手に縋り付いて来た。
黒鵺の手をぎゅっと握り、それに額を押しつけるようにして肩を震わす少女。
まだ闇に馴れない彼女の目。
漆黒しか映さないそれと、それとは違う別の恐怖で震える彼女はとても小さい。
黒鵺は少女の手を握り返しながら辺りを見回した。
炬昼はその事に安堵し、まだよく見えていない目を黒鵺に向けて微笑んだ。
それがはっきりと見えている黒鵺は不自然に跳ねる心音と、蒸気した顔を見られまいと顔を背けた。

まぁその行動は無意味なのだが…

その時、先程外で見た鈍く煌めく物がまた視界を掠めた。
黒鵺はそれを認めると、炬昼を連れてその場に行き、光の正体を目の当たりにする。

銀色の錨の形をした獲物が二つそこにあった。
その二つを両の手で掴んでみると、それは驚く程手に馴染んでいた。
見た目に比べてかなり軽く、振り回しやすい。
剣術はからっきしだめだった。
でもこれなら。
黒鵺は物体の壁目掛けて錨を振った。



そしてそれは、外に居る蔵馬とほぼ同時の行動だった。


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