氷のように

□一輪の花 立ちはだかる敵
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「黒鵺肩凝ったこれ頼む。」
唐突に蔵馬が背負っていた壺を黒鵺に押し付けた。
「いやいやいや俺は肩だけじゃなく腰にまで来てるからな、お前が持て。そして俺のも持て。」
今度は黒鵺が背負っていた壺を相手に押し付ける。
「何言ってる、俺よりお前の方が体力あるだろ単細胞。こんな所で口論してる余裕なんてないんだ。だからお前が持て。」
「関係ねぇし!第一そこまで言うならお前が持つ事だって出来るだろ!?冷静になれ!大人になれ!俺は絶対壺を持つのは嫌だからな!!」
「お前が大人になれ!」
「どっちも大人になれ」
終わりの見えない彼らの口論に冷ややかな声が突き刺さる。
それがあの日だまりのように暖かい少女のものだと理解した時、二人は黙って壺を再び背負った。



「こっちよ。」
炬昼に誘われて、ふたりは歩き出す。
暫く真っ直ぐ歩くと、不意に炬昼が足を止めた。
「ちょっと待ってね。」
岩壁を軽く叩きながらふたりに声をかける。
少しの間叩いていたら、さっきまでとは違う乾いた音がした。
「あ、ここだ。」
炬昼が岩に妖気を送るとズズズ、ゴゴゴ、と岩壁が横にずれる。
そこには真っ暗な道が一本続いていた。
「隠し通路か。」
「そう、盗まれた壺を回収する為に作られたの。ま、これは私が創ったから私にしか見つけられないし開けられないけどね。この穴は山から出られるわ。」
蔵馬の言葉に頷き、炬昼はその中に入って行く。
ふたりはそれに習い、最後に入った黒鵺が入ると同時に炬昼が岩に妖気を送り込み元に戻した。
「ごつごつした所だな。」
黒鵺と蔵馬はごつごつした道を行く炬昼の後をついていっている。

隠し通路に入ると炬昼の持っていた炬火は消され、ただの闇をひたすら歩いた。
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