氷のように

□2つの試練 踏み込む世界
1ページ/3ページ



旅の前に荷造り。
そう言って蔵馬と黒鵺は早急に身支度をした。
と言っても、持ったのは二日分の食料と水。
雨風を凌ぎ寝具にもなる少し古びたマントを羽織るだけ。
武器になる物を身に付けてはいけない。
妖気は常に通常の半分に抑える事。
それ全てをこなし、二人は村を出た。

それを見送った森羅はすっと表情を引き締めた。

森羅は鵺の一族の中で最も長けた盗賊であり、この村で最高峰の盗賊である。
それ故、情報網が幅広く、大抵の事なら直ぐに情報が入る。
それで幾度となく盗みにも成功し、これまで生き延びてきた。

その情報網のお蔭で、面白い事が判った。

銀太の事だ。

7年前、彼が目を覚ましたその日の夜。
寝苦しそうな呻き声に森羅は目を覚ました。
何事かと思い状態を起こしてみれば、甥の隣で眠っている銀髪の子供が呻いていた。
具合でも悪いのかと様子を見に行くと、蔵馬の身体が淡い光に包まれていたのだ。
本人は酷く苦し気だった。
あまりの事に動転してしまい、蔵馬の体を揺さぶろうとした時、蔵馬から光は消え寝息も正常になった。

翌日
蔵馬は至って普通に過ごしていた為、あれは何かの間違いだと結論付けその時は何も言わなかった。
それから暫く何事も起こらず、蔵馬自身にも変化が見られなかった為その事はすっかり頭から抜けていた。

だがある時ふと思い出した事がある。
しかしそれは極めて低い確率で、仮にもしそうであったのならこの先もっとあの子は苦しい末路を辿る事になるだろう。

(もう少し調べてみるしか方法はなさそうだな…)

森羅は子供達が消えていった方をじっと見つめ、軈くるりと踵を返し小屋に戻った。


+
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ