氷のように

□枯れない花 穢れぬ白
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銀太

妖狐の間でも持つ事のない銀髪の子供。
つまりは異質なのだ。
異質だからこそまだまだ眠っている力がある。

それを抑えられているのは、皮肉な事にも俺の犯した罪の産物のお蔭であって…
だけどいつ、何処で暴走し出すか判らない。
だから出来る限りこの子を見守ろうと思ったのはいつの事だったか。








「そーえー!」
尻尾を揺らしながら元気よく駆けてくる子供。
抱き上げて頭を撫でるととても嬉しそうな笑顔を見せた。

この子は素直に育ってくれた。
自分達の住み処であるこの森の奥には妖怪が滅多に居ない。
入り口付近に行けば居るには居るのだが、森の奥に踏み込む輩は居ない。
それは、この森の奥でしか生息しない生きた植物達が護ってくれているからだ。
そんな森の奥で自分と鵠絽以外の妖怪と全く接触しなくても、いつも元気で優しいままだ。
もう少し大きくなれば外に出しても良い。
生きる術を磨く為に。
しかし今はまだその純粋な心を保っておきたいのだ。

この子の為にも…









銀太と鵠絽はただじっとその一点を見つめていた。
目の前に並べられているのは霜霙の作った今日の夕飯のおかず達。
二人はそれを目の当たりにし、生唾を飲み込みながら霜霙の背中を窺った。
霜霙は今銀太達に背を向けている。
二人の行動を窺い知る事は出来ない。

大丈夫、今ならバレない…!

そろ〜と手を伸ばし、一番取りやすい一口程の大きさの肉を一つ摘まみ上げた。

「銀太」
突然霜霙が声をかけてきたことに一瞬固まり、摘まんだ肉を落としてしまった。
「摘まみ食いするなよ?」
振り向いた霜霙の顔は穏やかに笑っていたが、何だかそれが薄ら寒い気がして銀太は身震いした。
「摘まみ食い厳禁な?」
声も表情もいつもと変わりないのに何故彼の背後には鬼が居るのだろう…

銀太はごめんなさいと言いながらも鵠絽を盾に霜霙と目を合わせようとしなかった。
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