氷のように

□喪失の後 新たな出逢い
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今日も魔界は不気味な空をしている。
三日連続で降り続いた雨はすっかり上がり、しかし毒色の空に変わりはなかった。

そんな魔界のある一角にふたりの妖怪が川岸を歩いていた。
一人は少年だ。
年は3つか4つ。
黒の初々しい髪を後で少し上に束ねている。
目も黒真珠の様だ。
その顔立ちから、活発だと推測出来る。
背中には未熟ながらも黒い羽根が生え、確り形となっている。
もう一人は四十路後半あたり。
少年と同様、黒の目と髪だが、髪は短髪で襟足に付くか付かないか位だ。
背中の羽根は、少年のものより遥かに立派だ。
「…おじき(伯父貴)!なんかながれてくる!」
伯父貴と呼ばれた妖怪は、少年が指差す方を見た。
川の流れに任せるかの様に、小さな子供が流れてくる。
ここ辺りは水かさが深い。
あの状態なら、いつ沈むか判らない。
「黒鵺、お前はここで待ってろ。」
言い残して、妖怪は川に入る。

大人の腰あたりまである水は流れが早く、足が捕られそうだった。
妖怪は注意深く流されて来る子供に近づき、その身体を抱き上げた。
年は甥と同じ位だろう。
銀の髪は濡れて、七色にに輝いている。
水に浸かっていた身体は冷えきり、氷の様に冷たい。
服にうっすら残っている赤い染みは血ではないか。
「おい!大丈夫か!?おい!!」
岸に上がった妖怪は、子供を揺さぶった。
「……ッゲホッゲホッ!」
少し間を置いて、肺に溜まっていた水を吐き出した子供は、そのままぐったりと全身の力を抜いた。
「おじき…これ、いきてるのか?」
心配そうに伯父を見ながら、黒鵺は子供を指差す。
「ああ、もう大丈夫だ。さ、とにかく村に戻るぞ。」
子供を背負った伯父は、黒鵺と共に歩き出した。
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