氷のように
□赤にまみれし銀色の妖狐
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―――…ま…
くらま……
誰かが呼んでる
女の声だ
耳に心地いい…
暖かな声で
自分に向けて呼んでいる
暗い闇の中
この声だけが
自分を照らす光……―――
+
ザシュッ!
ビチャッ!
ドサッ!
いろんな音と様々な叫びが重なって聞こえた。
頬にかかった生暖かいもの。
ゆっくり目を開けると、赤と倒れている複数の塊が見えた。
たった今生まれたばかりの赤子は、それをじっと見つめる。
銀の初々しい髪。
大きな金の目。
小さく愛らしい耳を、ぴこぴこと動かしている。
赤子は目も耳も発達していた。
だから、積み上げられた同胞の死体も、海の様に広がる鮮血も、全てが見えていた。
「おい、これはどうする?」
男の声だ。赤の短髪で、髪と同じ炎の目が、冷ややかに自分を見下ろしてる。
「放っておけ。どうせ一人では何も出来やしないんだ。」
もう一つ声がした。
これも男の声だ。
だが、違う場所に居るからか、姿も見えないし、声も少し遠い。
「行くぞ。」
「おお。」
2つの気配が消えた。