氷のように

□二人の武器 炬昼の正体
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スパッ!


バシッ!



外と中から同時に攻撃を喰らった物体は真っ二つに避けた。
物体の中から黒鵺と炬昼が飛び出して来る。
「黒鵺!炬昼!」
蔵馬の歓声が響く。
「よっ!」
蔵馬に陽気に小さく手を上げて、黒鵺はにかっと笑う。
炬昼もにっこり微笑んでいる。
蔵馬は鼻の奥がつんとなるのは判ったが、何とかそれを見せまいと必死に堪えた。
笑われるのは目に見えているから。

「にしても蔵馬、お前何だよその手。」
黒鵺は蔵馬の右手を見て痛そうな顔をする。
「ああ…ちょっとな。」
「何だよそれ。」
黒鵺の突っ込みに笑った後、蔵馬は口を開いた。
「さて帰るか…と言いたい所だが、先ず聞きたい事がある。炬昼、お前此処の所有者とは一切無関係なんだろ?何故此処で働いているんだ?」
炬昼と黒鵺の目が見開かれた。
「…どうして判ったの?…と言いたい所だけど、ここまでやっておいてそれも愚問よね。」
炬昼の口角が吊り上がる。
あの愛らしく笑っていた少女だとは思
えないくらいにその笑みは妖艶且つ魅力的だった。
「そうよ、私は所有者を主として見ていない。差し詰め、此処の所有者のお首を頂戴しに来た賞金稼ぎって処かしら?」
炬昼の態度が一変する。
さっきまでの雰囲気は何処にもなく、ただ冷笑する少女がその場に立っていた。
「まだ見習いの…な?」
「うっ…もうそこ突っ込まないでよぉ」
蔵馬の鋭い言葉に、炬昼の表情がまた変わった。
先程までのおっとりとした優しい雰囲気。
どうやらこれが彼女の"素"らしい。
「それに、見習いなのは貴方達も一緒なんでしょう?」
「まぁな」
やっと黒鵺が話しに入って来た。
炬昼のころころと変わる人格に戸惑っていたのだろう。
「私の家系が賞金稼ぎの出でね、私もそれに習って修業してたんだけど…才能なくてねぇ〜。でも、物は試しにって此処にほっぽり込まれちゃった。」

あははと笑う少女を見て二人は思った。
(この子はちゃんと賞金稼ぎとして生きていけるだろうか…)と。


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