氷のように

□初めてのおつかい 危険な仕事
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「……………」
銀の少年の真剣は、黒の少年すれすれで地面に突き刺さり、硬直してしまった黒の少年は、身体が弛緩した後その場にへたり込んだ。
「俺の勝ちだな黒鵺。」
銀の少年は黒の少年に不敵な笑みを見せた。
「くっそぉ〜!蔵馬!お前もうちょっと力抜けよ!!」
黒鵺と呼ばれた黒の少年は、蔵馬と呼んだ少年に文句を言った。
「俺が手加減するとでも?ふっ、甘いな。」
「おーい何か腹立つんだけどぉ」
額に青筋を浮かべながら、黒鵺は据わった目で蔵馬を見た。
それに対し、蔵馬は飄々としている。
「止めろふたりとも。」
ふたりを宥める声が現れた。
「あ、伯父貴。」
「森羅。」
ふたりは声の方を見た。
そこに居たのは黒鵺の伯父であり、幼い蔵馬を救った恩人でもある森羅だ。
森羅は黒鵺を見下ろした。
「黒鵺、お前は肉弾戦は性に合ってるが剣はからっきしだ。また違う武器を探せ。」
伯父の言葉に甥は素直に頷く。
「蔵馬、お前は得物を使うのには長けているが肉弾戦は性に合っていない。剣は黒鵺より上だがやはり少し不得手だ。」
蔵馬も頷く。
森羅はううむと唸った後、ぽんと手を叩いた。
「よし!今回の宝ははお前達ふたりで盗って来い。」
「……………は?」
ふたりは同時に素っ頓狂な声を上げた。

―蔵馬達が今住んでいる村は盗賊が集い出来た村。
黒鵺や森羅も例外ではなく、蔵馬も拾われてからずっと盗賊になるべく、黒鵺達と行動していた。―

「待てよ伯父貴!どこからどうやってそんな話になる!?てか伯父貴はどうすんだよ!?」
詰め寄る甥に対し、森羅は豪快に笑い飛ばした。
「俺もいい加減年だからな。盗みは若者に任せるとするさ!」

黒鵺は落胆した。
そうだ、自分の伯父はこんなひとだったんだ。
「諦めろ黒鵺。森羅は一度言い出したら聞かない。」
黒鵺の肩に手を置き、蔵馬は深く溜め息を吐いた。
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