7番目の守り人
□ 【第17話】 炎とマリア
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もしも
もしも私が罪を犯したら…
どうか、どうか許さないで
そして
あなたの手で…
【第17話】 炎とマリア
「やっぱり…コピーされた形跡がありますね。」
ジャンニーニはパソコンの画面の前でため息をついた。
傍らのスパナは飴を舐めながらうん、と頷いた。
「侵入した奴の正体はもっと調べないと分からないけど、この日だけ集中的にログが多い。間違いないよ。」
「やっぱり…ネルビですね?」
「それはどうかな。」
スパナは冷静に解析データを目で追った。
『第2アジト』にデータを映す作業中に見つかった『クラッキング』の痕跡。
ボンゴレのデータを何者かが盗み取った跡がプログラムの中に残っているのを発見したのは正一だった。
「世界中でパソコン使ってる人間は何億人もいる。ネルビとは限らないよ。」
ボンゴレアジトのプログラムに侵入するなど、並の人間ではない。
だが、今このタイミングで侵入者の痕跡が見つかったところでネルビだと決め付けるのはかえって後で後悔する原因にもなる。
かつてミルフィオーレの『メカニック』でもあったスパナには、それがよく分かっていた。
「正一とウチがミルフィオーレにいた頃、同じように白蘭の持ってるプログラムがハッキングされた事があってね。」
「ほう。」
「みんなボンゴレかどこかの諜報部の仕業だって大騒ぎして…それこそウチも寝ないで犯人探しした。」
「で、どうだったんですか?」
「犯人、誰だったと思う?」
「?」
「ただの女の子。」
スパナはデータの解析を続ける手を休めないまま、棒だけになったキャンディを捨て、もう1本に手を伸ばした。
ジャンニーニもそれを見て、さっきスパナにもらった飴の袋を開けた。
「女の子…ですか?」
「マフィアでも諜報部のプロでもない、内向的でパソコン好きな…普通の女の子だったんだよ。」
犯人の身元を割り出した結果、『犯人』はただ興味本意でミルフィオーレのプログラムに侵入しただけの「中学生」だと分かった。
彼女はただ、自分のクラッキングの腕前をクラスメイトやブログ仲間に自慢することや、自己満足のために手当たり次第にいろいろなプログラムに侵入していた。
そして偶然…ミルフィオーレのそれに行き当たったのだ。
「その子の身元から何から一切合切調べた結果、マフィアとは全く関係ない事が分かった。白蘭も笑ってたよ。」
「ハハハ…そうなんですか。」
「その子、殺されちゃったけどね。」
スパナはキャンディーの軸をパキン、と折った。
「え…。」
「所在地が分かった時点で、ミルフィオーレの暗殺部隊が直行したから。」
「…笑えないじゃないですか…。」
「うん。そうだね。」
自分たちの『害』になった以上、ミルフィオーレにとっては同じだったのだ。
犯人が敵の諜報部であろうが、ブログに『コピー&ペースト』するだけで満足するような単なる幼稚な一般人であろうが、構わなかった。
少女は自室のパソコンの前で惨殺され、両親共々白蘭の指示でミルフィオーレに『消された』とスパナは後で人づてに聞いた。
「そういう残酷な事をするのはツナが嫌うから、ボンゴレはまずやらないよね。」
「…そうですね。」
目の疲れを感じ、ジャンニーニは傍らの目薬を手に取った。
全てが終わったら温泉とマッサージに行こう。スパナや正一とそう約束したことを思い出して気合いを入れ直す。
戦闘員ではない自分たちの『戦場』はここ、コンピューターシステムの前だ。
例え過労死しようとも、ファミリーを守るため、離れるわけにはいかない。
そう…今回はミルフィオーレとの戦い以上に過酷なのだ。
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