Route 66

□Episode5.デザート・ローズ
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「http://…。」



カタカタとキーボードを打つ手が止まり、横目で渡されたメモを見る。

細かいURLをバーに打ちこむのは慣れていなかった。

いつもはそんな面倒な事はせず、ダイレクトにキーワードで検索をかけてしまう。

もっと面倒な時は携帯に向って調べたい事を怒鳴れば勝手に検索するアプリだってある。

ママ・スパロワが何故こんな面倒な事をさせるのかカイトには理解不能だった。



「…o.z-z.jp/…と、」



最後の単語だけ一気にメモを見ずに打ちこむ。

この女の名前には意味があるのだろうか。

そんな事が少しだけ気になった。



「…Jessica。」



サイトが立ち上がり、パスワード入力画面が開く。

昨日暗記させられたIDとパスワードを入力する。

現れたメールの絵文字からリンク先に飛ぶと、ママ・スパロワからのメッセージが入っていた。



『もう一度言う。早くナナを消せ。2度目はない。』



思わず笑いが込み上げてくる。

相変わらず、おっかない。

だが、無茶を言っているのは向こうなのだ。

自分にも仕事がある。

それなのに無理なスケジュールを突っ込んでくるのが悪いのだ。

ダラダラしていた気はカイトにはなかった。



「オレは暗殺専門じゃねえんだよ。死体処理係のオレに…何でそんなに生きてる人間の処理をさせたがるかねえ?」



カイトは傍らの女に話しかけた。

女は応えない。

応えられる口などもうないのだ。

目を閉じ、白くなった唇が少し開いている。

美しい死体だ、とカイトは思った。

彼女はマフィアの抗争で命を落とした「悲劇のヒロイン」だった。



「さぁ、ここでお別れだ。」



船を止め、美しい女の死体を棺ごと持ち上げる。

朝の海には誰もいない。

夜明けの光が凪の海を照らし出していた。

カウンターをスタートさせ、棺の蓋を閉めるとそっと水の上に浮かべる。

この辺りは見た目よりも海流が早い。

棺はあっという間に船から離れていった。



「いい夢を…アイリーン。」



カイトが彼女を見送って数分後、遥か1km先の沖合で水柱が上がった。

棺を粉々に吹き飛ばすだけの爆薬が正常に働いた証だった。

静かに十字を切り、船を走らせる。

こっちの仕事は完了した。

さぁ…いよいよ行くしかない。

ため息をつきたかったが、やめておいた。



「よりによってお前を消せとはな…ナナ…。」



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