Route 66

□Episode3.スター・サファイア
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「おじちゃん、もう1回やって!」

「何だよ。もう10回目だぜ?」

「おーねーがーいー!!」



 Episode3.スター・サファイア



前の道で子供たちが騒いでいる。

次元の手には小さなパチンコ。

それを、向かいの家の塀に置いた瓶に当てて遊んでいるのだ。

最初2,3人だった子供はいつの間にか10人くらいに増えていた。

そんな様子を、ナナは店の中から笑って見ていた。



「あれ、旦那?」

「ん〜…そう見える?」

「どっちかっていうとヒモかしらね。」

「あはは、やっぱり。」

「でも、良い男じゃない。」



店には近所のパン屋のおかみさんと、観光客が2〜3人来ている。

次元は店を手伝う素振りをしながら、結局あまり何もしないで遊んでいる。

接客は下手ではなかったが、すぐに飽きてしまったらしい。

ヒモに見えてしまうのも無理はなかった。

仕方がないので、ナナは新作の帽子を被せてマネキン代わりにしていた。



「すいません。」

「は〜い?」

「あの外の人の被ってるやつありますか?」



次元はスタイルが良く帽子が似合うので意外と宣伝効果があった。

今日だけであの帽子が4つ売れている。

外の子どもにも被っている子がいた。



「あれ…鐘が鳴ったね。」

「お昼か。じゃ、これは置いてくよ。」

「ありがとうおばさん。」



パン屋のおかみさんは毎日サンドイッチを届けてくれる事になっていた。

いつもは1人分だが、今日は3人分。

余計の2人分は次元の分だった。



「おら、ガキども帰れ帰れ。母ちゃん待ってるぞ?」

「次元はナナが待ってるんでしょ?」

「ねぇもうキスした〜?」

「うるせえよ。ほら、みんな行け!」

「キャハハハハ!じゃあね〜!」



無邪気で少しおませな子ども達。

この場所は劇場が近く、母親が役者やダンサーの子も多い。

ませた事を言うのはそのせいか。

ナナは店の奥でカフェオレを淹れた。

次元は冷蔵庫から勝手にスミノフを引っ張り出した。



「ホントにアル中よね…アンタ。」

「こんなもん冷やしとくお前が悪い。」

「最後の1本なんだけどな。いいの、夜飲まなくて?」

「チッ…分かったよ。」

「そうよ。いい子だから炭酸にしときなさい?」



ナナと一緒に行動するようになってから、次元は煙草や酒の量を減らしていた。

口うるさく言われるのも1つの理由。

だが、それ以上にニコチンやアルコールに頼らなくてもいい精神状態な事が大きかった。



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