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□ 【第十三話】 遥かなる時代の記憶
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帰りたい 遥かな故郷
もう見えない、知り得た筈の未来
叫んでも 泣いても
【第十三話】 遥かなる時代の記憶
「ルッパァアア〜ン!!!」
「あぁららららら?不二子ちゃんどしたのぉ〜?」
「あぁん!ルパン、ルパン、ルパァ〜ン!!」
部屋に入ってくるなり、不二子はルパンに抱きついて離れなかった。
よほど怖い事でもあったのだろうか。
子供のように声を上げて泣いていた。
やはり自分と同じようにとんでもない『世界』を見てきたのか…。
次元は珍しく不二子に同情していた。
「ヨチヨチいい子ちゃんね。何があったのかな〜?」
「私が大富豪と結婚してルパンが死んで、次元がテレビ越しに私に怒鳴ってて、千汐のお腹に五ェ門の子どもが…!」
「は〜いはい分かった分かった。とりあえず混乱してるのね。落ち着いてから中身整理してもう一回話してくれる…?」
「ふ…不二子、お主最後に何と…?」
「お前はそこだけキッチリ聞き逃さねえのかよ。」
4人が行って戻って来た『世界』は見事にバラバラだった。
ルパンと次元が凶悪な強盗殺人鬼として生きる『世界』。
不二子がルパンを裏切り倒し、一味に恨まれて生きている『世界』。
五ェ門がかつての許嫁と添い遂げる道を選んだ『世界』。
ルパン一味と銭形の立場が逆転している『世界』…。
だが、1つだけ同じ点があった。
それが、いずれの『世界』でもこの場所に『埼玉宮殿』が存在している事である。
「うまくいけば…このまま待ってればそのうち千汐が来て、5人揃うって訳だな?」
「ええ。私の『導き』どおりに来ていれば…ですね。」
「どういう事なのだ…オホヒコ殿。」
オホヒコと名乗る男は、ずっとドアの前に立って待っていた。
ここに来るとき、何らかの形で4人ともこの男に導かれてやってきた。
残るは1人…千汐だけだ。
「あなた方はベテランの泥棒です。経験豊かですし、頭も切れる。ですからほとんど自力でここまで来ました。」
「…千汐はそうでないと申されるのか?」
「残念ながらね。」
天井にある五芒星の頂点は5つのうち4つまでは埋まった。
あと1つ埋まれば宝への道が開ける。
しかし、その保証はできないとオホヒコは言った。
オホヒコに助けられるのはこの『大宮殿』に入ってから。
だが、そこまで無事に来なければこの部屋には来られないというのだ。
「正直4人来ただけでも驚いているのです。私やオオキミは1人も来られないとすら思っていたのですから。」
「では…千汐はここに来られない可能性があると…?」
「その可能性が高い。」
「…っ!」
「だ〜いじょうぶだよ、五ェ門。」
顔色を変える五ェ門に、仲間たちは笑ってそう言った。
千汐は必ず来る。
それは間違いない、と。
「お前はアイツが来たら真っ先に抱きしめてやる準備だけしてりゃいいのさ。」
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