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□【第三話】 ウーロン茶と王家の秘宝
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「…つまんない。」

「そうか?」

「何で外国なのに日本の店ばっかなの?」



【第三話】 ウーロン茶と王家の秘宝



親日家が多い証。

そう、次元は言った。

台北市内を歩くと、驚くほど日本の飲食チェーン店が多いのが分かる。

どこかで見たオレンジ色の看板の牛丼屋に、青い看板のコンビニ。

親切な店では、日本語ペラペラな店員が揃っているところもあった。



「だけどさ、次はエジプトに行くんでしょ?なのになんで台湾でのんびりしてんの?」

「さぁな。オレもルパンが何考えてんのか分からん。」

「しかもウーロン茶70kg買って来いって…。こんなに飲んだら気持ち悪くなんないかな?」



今日は朝から次元と茶屋巡りだ。

ルパンは潰れた温泉施設を改装したアジトで何か調べ物をしていて部屋から出てこない。

不二子は南部で情報収集。

五ェ門は日本に飛んで用事を済ませ、夜こちらに来るという。

千汐はよく分からないまま、黙って次元について歩いていた。


「よし、これで終わり。メシ行くぞ。」

「ルパンのごはんは?」

「奴は呼んでも来ねえよ。一旦集中しだすとメシどこじゃなくなる奴だからな。」


小龍包が食べたいと言うと、次元は有名な店に連れて行ってくれた。

今日はもう予定がないらしい。

観光か昼寝かどっちかだと次元は言った。


「けっこうのんびりしてるんだね。」

「そのほうが人生楽しいじゃねえか。日本人は働きすぎだ。」

「銭形のとっつあんとか?」

「ハハハ。ちげえねえや。」


結局一通り近場を観光して回り、夕飯の買い出しをしてアジトに戻った。

自分がペーペーなのだから夕飯は私がつくる。

そう言うと、次元は大いに喜んだ。

ルパン一味は基本的に自炊。

その手間を引き受けてもらえるのは大助かり、とのことだった。


「へぇえ。組長候補のお嬢さんじゃ家事は苦手かと思ったぜ。」

「だって最初っから偉い訳じゃないもん。洗濯もトイレ掃除も小っちゃい頃からみんなやらされたよ。」

「そういやお前…あの馬鹿力がなきゃ普通の娘さんだよな。」

「どういう意味?」

「いや。ヤクザ者にゃあ見えねえって事さ。」


千汐はヤクザには見えない。

昔から正体を明かす度にいろんな人に言われた事だった。

だがそれは、千汐がそういう風に育てられたからだった。


「だってそれじゃ、男の人にドン引きされちゃうじゃん。」

「へぇ?」

「一見力なんかないように見えて実は…ってところが巴御前の魅力でしょ。」


力自慢の女が好きな男はそうはいない。

だが、おしとやかで美しい女を嫌いな男もそうはいない。

2つを兼ね備えた巴の女は完璧なのだと千汐は母に言い聞かせられて育った。


「そうかねぇ…。」

「ギャップ萌え、ってあるっしょ?」

「…おじさんにはイマドキの若者言葉は分かんねえよ。」


次元は年寄り臭くそう言うと、窓に向かって煙草の煙を吐いた。



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