7番目の守り人

□ 【第6話】 意思
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『石が自ら発火した…。なるほどのう。』



電話口で、タルボはむぅ…と唸った。


リングとなるべき強力な『力』を持った石…すなわち「パワーストーン」の類は、不思議な現象を起こすことがある。


だが、石自体が何物の力をも借りず単独で発火するなど、長年リングに携わってきたタルボでもあまり経験のない事だった。




「まるで石が私を嫌ってるみたい。こんな事…今まで1回もなかった…。どうしたらいいの…?」


『落ち着きなさい。力のある石を相手にするときには、まず…その「声」をしっかり聞いてやることだよ。』




タルボは泣きそうな声を出すルイを優しくいさめた。


『声』を聞く。


リングを作る時に、タルボやルイは座量となる石や金属の『声』を聞き、『意思』を確認する。


『力』のある道具を作るためには、まずどのようなリングとなって生まれたいのか、しっかりと確かめねばならないのだ。




『わしもそんなに強力なものには出会ったことがないから確かな事は言えんが…石がそんなに嫌がっているのならば、恐らくお前がどんなに説得してもよいリングにはなってくれんじゃろう。』


「マスター…でも…。」


『わしの推測じゃが…その石たちはリングになるより他の「役目」を持っているのかもしれん。』


「『役目』…?」


『そうじゃ。お前がまずはそれを聞きだしてやらん事には、石が心を開いてくれる事はない。』


「私に…出来るかしら…。」


『愛する「娘」よ…大丈夫じゃ。お前には、誰よりもそれができる輝かしい才能がある。それはわしが一番分かっておる。』




電話を切った後、ルイは9つの石を再び元の箱に戻した。


雲雀と草壁は、今日は別の用務でルクソールを出てしまっている。



(もしだめなら…そう言おう…。)



ルイはリングの道具を全て片づけると、タルボに言われたとおり静かにその石たちと向き合った。


そして、呼吸を整え、心を落ち着かせた。




「…無理させてごめんなさい。私はもう、あなた達を無理にリングにしようとは思わないわ。」




手のひらに1つづつ乗せ、『声』を閉ざしてしまった石に語りかける。


人が見たら眉を潜めるような不可思議なこの行為。


しかし、ルイたちリング職人にとっては重要な事だった。



「あなた達の言うとおりにするわ…。あのお墓に戻してほしいならそうする。お願い、『声』を聞かせて…。」



赤、青、黄色…。


ルイは根気よく語りかけた。


そして、最後の『黒い石』を手のひらに乗せたときだった。


急に、見たこともない映像がルイの脳内に浮かんできた。


それはまさしく、石の『声』だった。



「これは…あの遺跡…?」



ルイは目を閉じた。


そして、その白昼夢のような感覚に落ちていった。





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