Route 66
□Episode7.ライトニング・クォーツ
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「…ニセモンじゃねえのか?」
帰ってくるなり、次元の発した第一声は大変失礼なものだった。
だが、無理もなかった。
自宅に帰ってきていきなり伝説のクラシックカーがあれば、普通は仰天する。
ましてや彼は無類の車好き…。
一旦見始めると、夕飯を作って待っていたナナをそっちのけで車庫から出て来なくなってしまった。
「いーかげんにしなよ!ご飯冷める!」
「いいじゃねえかよもーちょっとだけ!」
「ハンバーグにしろって言ったのアンタじゃないの!」
「イテテテテテ!分かった、分かったよ!」
「も〜。車は置いといても腐らないんだから後にしなさいっての。」
結果的に車は本物だった。
ルパンもどこかで盗んで持っていた時期があったらしい。
テッセラクトがどんな経緯で手に入れたかは分からないが、状態もとても良かった。
これをイタリアからずっと乗ってきたと話すと、次元は羨ましそうな顔をした。
「やっぱそうだよな。イタリア国内で乗り回すのがサマになるぜ。」
「明日近所走ってくれば?」
「ばっきゃろう!そんなあぶねえ事できるか!」
「何で?」
「ここら辺のガキどもの恐ろしさをおめえも知らねえ訳じゃねえだろう。コインでも持っててキズでもつけられたら…。」
「何言ってんのよ。」
帰り際に銃を向けられてもっと危ない事になったのは言わないでおこうとナナは思った。
この車までで3本の鍵の謎が解けた。
残りは5本。
今まではまるで宝探しのような感覚できた。
このまま残りも同じようにテッセラクトが残した遺品類が続くのだろうか。
ナナは残りの鍵を一つ一つ確かめた。
「今までの2つは私が見た事あるものだったから、残りもそうだと思うのよね。」
「んー。」
「パパはやっぱり遺産のつもりで残したのかしら。亡くなった時にお金は全然持ってなかったみたいだけど…。」
「あー。」
「国内にはもうないから年明けたら少しお店休みにしないと時間が…」
「おー。」
「…って、全然聞いてないし!!」
「何だよ?」
次元は夕食を食べると速攻でガレージに走っていき、深夜になってもまだ車の下に入って何かいじっていた。
他のものが一切目に入らなくなる集中力。
他のどんな高価な宝石を見た時にも見せたことのない顔。
こうなってしまったら男はもう何も聞かなくなる事をナナは知っていた。
今日何か話すのはやめた方が良さそうだ。
「もう良いよ。今夜はそっちと寝な。」
これ以上は付き合いきれない。
先に風呂に入って寝てしまおう。
そう思って脱衣所に行くと、次元がにやにやしながらついてきた。
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