Route 66
□Episode6.アパタイト・キャッツアイ
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次元が呼び出されたのはとある高級ホテルだった。
有名人が多数仮住まいに使っている事で有名で、セキュリティに定評がある名門。
ホテルのフロントに相手の名前を言うと、ボーイがその階まで連れて行ってくれた。
「Mr.テッセラクト、お客様をお連れしました。」
部屋の奥から入って来いという声がした。
ボーイがドアを開けたのは最高級のスイートルーム。
高そうな家具が並ぶ室内は何人もの人間が暮らせそうなスペースがあった。
ベッドルームは奥、真ん中にリラックススペース。
テッセラクトは一番奥の窓のある部屋にいた。
「カエルの子はカエルだな…面白い男を選んだものだ。」
「…アンタがMr.テッセラクトか?」
「しばらくだね、次元大介。」
ナナの父親は機嫌よく次元の手を取った。
次元は困惑していた。
目の前にいるのはかつて次元が一時的に所属していた組織のボスだった。
組織が諸事情により解散になり、「退職金だ」としていくらかの金をもらって別れてからはずっと会っていない。
だが、Mr.テッセラクトは次元をよく覚えていた。
「あの時は世話になったね。」
「まさか…あんたの娘とはな。」
「似てないか?」
「父親の顔が3回変わったのを見たとナナが言っていたが…。」
「4回目の手術で元に戻したんだ。」
「なるほどな。」
年齢は次元より20くらい上のはずだ。
だが、歳よりもかなり若く見える。
整形のせいかもしれないが、昔と全く変わっていないように思えた。
「どうしてナナ抜きで会おうと言ったか分かるか?」
「…やっぱりオレみたいなのには娘はやれねえんだろ。」
「相変わらずマイナス思考だな、君は!ボクはそんな事言える人間じゃないだろう!」
テッセラクトは腹を抱えて笑った。
確かに、と次元は密かに思った。
次元も次元だが、目の前にいる男も「相当な」人物なのだ。
「10歳になってない娘を秘密結社に預ける父親だよ、ボクは。むしろあのルパンの相棒がナナを欲しがってるなんてファンタスティックだ。」
「…大歓迎されると後が怖いんだが。」
「まあ、そうだね。ボクはナナを君に押し付けてしまう気満々だから。」
「は…?」
「今度ばかりはヤバい。そろそろこのテッセラクト…天国からお呼びがかかる気配がするのさ。」
テッセラクトはそう言うと、シャツのボタンを開けて上半身を見せた。
夥しい数の手術痕。
そして、ペースメーカーが入っているらしき胸の盛り上がり…。
次元は言葉を失った。
若く見えるのは顔だけだ。
目の前の男の身体はもうボロボロになっていた。
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