Route 66

□Episode5.デザート・ローズ
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「次に来る奴もだいたい分かるよ。多分もう…アタシを狙ってるはずだ。」

「何て奴だ?」

「『始末屋』のカイト…凄腕の仕事人。」



次元が裏切ったことをもうスパロワは知っている。

となれば、彼に太刀打ちできる者を送り込んでくるだろう。

ナナは次元がフライ・ジュニアを追い払って以降、ずっとその男を警戒していた。

死体の処理を専門に行っていたカイトという男…。

彼はナナと同じように、殺しに関する類稀なる能力を持ちながらそれに関わってこなかった人間だ。

死体処理のプロ。

それが男の肩書だった。



「スパロワの組織がやった殺しは現場に死体が残らなかった…。なるほどな。そいつの仕業か。」

「今は外部の委託を請け負ってるらしいよ。仕事ができるから今でもかなりの売れっ子だって。」

「殺人の証拠から何から全部消しちまう奴か…そりゃあ重宝がられるだろうな。」

「カイトは爆薬使いでね。依頼のあった死体はみんな殺人の証拠品と一緒に海に運んで…沖合で爆弾を使って木っ端微塵に吹っ飛ばすんだ。」



その手口を知る者は組織でも限られていた。

カイトは信頼できる者にしか自分の仕事の事を語らなかったのだ。

その1人がナナだった。



「死んだ人間の体重とか死因に合せて火薬の種類と量を調整して…爆発したら一瞬で灰になるような専用の爆弾を作るんだ。」

「ほ〜お?」

「水に浮く木製の棺桶に死体と遺留品を全部入れたら爆弾をセットして、それを時間差で爆発するようにして海に流すわけ。」

「へぇ…やけに詳しいじゃねえか。さては…」

「…昔の男。元カレ、ってやつ。」



正確にはきちんと別れた訳ではなかった。

組織での事件があった時、ナナはまだカイトと恋愛関係にあった。

しかしナナが組織を飛び出したために一方的にそれきりになった。

つまりは自然消滅というわけだ。



「一時は一緒に組織出て独立しようとか言ってたのにさ…あれ以来うんともすんとも言ってこないんだもん。不誠実な男。」

「…おめえはそんな根性なしのどこに惚れて付き合ってたんだ?」

「上手かった…から?」

「カラダ目当てかよ…。」

「アタシ、『テクニック』のある男に弱いんだよね。」



カイトは器用な男だった。

だから、ナナや次元を「消す」事もその気になればいつだってできるだろう。

しかし、未だにナナの周囲にはその気配がない。

きっと、「渋っている」のだ。

そんな風にナナは思った。



「あいつは昔から自分の納得した仕事しかやらない奴だからさ。きっとアタシと同じように…殺しなんかやりたくないんだと思う。」

「何でそう言い切れる?」

「そういう奴だから…としか言えないけど。」



知った気になっている、というわけではないと思う。

一緒に育ち、恋をして、散々身体を合わせた相手だ。

カイトとの関係がもしお互いの得体が知れないような駆け引きずくめの恋だったなら、ナナも今こうして自分の家でのんびりした暮らしなどしていない。

家に爆弾を仕掛けられるのを警戒し、どこか遠くに逃げているだろう。

彼はそんな手は使わない。

それが分かっているからナナも逃げない。




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