Route 66

□Episode5.デザート・ローズ
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「ママにも分かってないはずはなかったんだよ。だって…殺しちゃいけないっていったのは、ママなんだから。」



銃弾を人に当ててはいけない。

その前提で、スパロワはナナに銃を持たせた。

ナナが素直に自分の言う事を聞かないのはスパロワも理解していた。

彼女はナナの説得に苦慮していた。

しかし…

2人の会話が現役の「殺し屋」達の耳に入ってしまった事から事件は起こった。



「アタシが暗殺業に転向すれば自分たちはもう生きていけなくなるって…みんな本気でそう思ってたんだろうね。」



組織の殺し屋たちは、密かにナナを恐れていた。

ナナがいれば、スパロワは自分たちを必要としなくなる。

そうなればもう生きてはいけない。

いや、それだけではないだろう。

彼らは血に飢えた「狂気」の塊であり、外の『世界』に野放しにするにはあまりにも危険な存在だった。

ならばいっそ組織の手で…。



(オレ達はママに殺されてしまうかもしれない。)

(もう、オレ達は要らない人間になるんだ。)

(きっとそうだ…ママはオレ達を…。)



そんな噂が広まり、組織内はパニックになった。

ナナが暗殺者になればきっと自分たちは「処分」されてしまう。

もう要らない、と捨てられてしまう。

自分たちを育てた、「ママ」であるスパロワに…。

その恐怖はスパロワに育てられた者達にとってはあまりに恐怖だった。

そしてその狂気は一気に暴走に転じた。



(お前のせいでママはオレ達を殺すんだ!)

(ナナがママを独り占めしたせいだ!)

(ナナを殺さなきゃオレ達は…!!)



組織中の人間が、ナナを寄ってたかってリンチにかけようとした。

二重に三重に取り囲まれ、ナナはあらゆる切っ先や銃口を向けられた。

彼らに取り巻く死の恐怖。

そして、見限られ、排除される事への恐怖…。



(ママが)

(ナナが)

(ママがナナを)

(ナナのせいで)

(ママがナナのせいで)

(だからナナを)

(オレ達が)

(オレ達がナナを)

(ナナを)

(ナナを)

(殺さなければ)

(殺さなければ)

(殺さなければオレ達は)

(ナナを殺さなければオレ達は―――――)



怒り

絶望

恐怖

憎しみ

嫉妬

そして、自分たちの「ママ」に対する思慕…

それらが巨大な殺意となってナナに襲い掛かった。

リンチされ、切り裂かれ、甚振られて死ぬ恐怖のイメージがナナの中で渦巻いた。

そして…

気づけばナナは引き金を引いていた――――



(ぁああああああああああああああああああ!!!!!)



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