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□【第二十話】 ゲイシャガールは鬼畜の顔を見たか
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天井にギラリと光った刀身。

それを寸でのところで避けて身を翻した。

笑みを浮かべる女。

薙刀を構え、その鼻先に突き付ける千汐。

その途端、天井板がバーン!という音と共に突き破られた。

畳の上に飛び降りた2人の男。

銃身と白刃の切っ先とが艶やかな着物に突き付けられた。



「何え?いきなり物騒やなぁ…。」

「動くな、ジャック・ウィリアムズ。」

「…えらい遅かったやないの、ルパンはん。」



女はクスクスと笑いながら両手を上に上げた。

畳の上に落ちた真新しい小刀。

目尻に紅をさした艶やかな女がちらりと天井を見やる。

そこからは本物の高尾が流した血がどろりと流れ落ちていた。

下の部屋の熱気が伝わり、人知れずに腐った女の血…。

その下で夜な夜な男女が睦み合っていたその悍ましい事実…。

千汐は改めて恐ろしくなった。



「仕事は終わったえ。約束通りになぁ。」

「てめえ…気づいてやがったのか…。」

「うちにもPride、はあるんやで。」



不自然さのない京言葉にプライド、だけが英国の発音。

憎らしい態度を崩さない女装の男。

その仕草も容姿も見事すぎるほどの変装ぶりだった。



「アンタが盗みに命賭けてるのと同じように…うちは殺しと快楽に命賭けてる。」

「…死んだてめえの爺さんたちと同じようにか?」

「ウチはウチやで、ルパンはん。」



得体の知れない不気味さが取り巻いていた。

この男は本当に何者なのか。

ワルサーを構えたルパンの額を汗が伝う。

ジャックは剣と銃とを突き付けられ、武器を抜いていない。

それなのに何故か嫌な予感がした。

それはまるで…心臓の真上から銃口を突き付けられてでもいるような…。



「本当は千汐ちゃんの血も欲しかったんやけどな。同じとこで2人は…さすがに欲張りやったなぁ。」

「てめえの目的はやっぱりあの刀に血を吸わせる事か…。」

「ビデオはついでやな。あんなもん…何で画面越しに見ておもろいのか分からへんわ。」



ジャックは映画会社から飛田新地の話を聞いた直後、すぐさまこの場所に潜伏した。

そして、千汐が五ェ門に連れられて店に来たタイミングを見計らって「仕事」を実行した。

店の女の中から「特上」の高尾を選んで満足するまで貪り、殺害。

そしてさらに、肉塊となった高尾を存分に犯した。

その一部始終は一夜にして動画に納まり、デトロイトに送られた。



「いつも通りやって、あとは女の恰好して待ってればアンタがそのうち来るやろと思ってな。そしたら案の定や…。」



ジャックの変装は見事だった。

どこからどう見ても女。

その変わりようは、変装を得意とするルパン以上だった。



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