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□【第二十話】 ゲイシャガールは鬼畜の顔を見たか
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「割に合わない仕事や…ほんまに。」

「何〜?どないしたん〜?」

「いいええ〜…独り言どすぅ〜。」



明かりを落とした部屋の中で、千汐はにっこり笑って見せた。

客は早くも酔いが回った様子で何だかゆらゆらと頭を揺すっている。

お銚子を2つ空けて機嫌もよさそうだ。



「ほんま…こんなきれいな子が来てくれてうれしいわ。」

「嫌やわぁ。お世辞やろ〜?」

「そんな事あらへんて〜。千汐ちゃん最高やぁ〜。」



高尾の言っていた客が来る前に、五ェ門にうまく別の男を部屋に入れてもらった。

薬が効きやすく、騙されやすそうなタイプ…。

これなら誤魔化すのも苦労はなさそうだった。



「旦那さん、そろそろええ感じになって来たんと違います〜?」

「そやな…ええか…千汐ちゃん?」

「へぇ…ほなこちらへ。」

「へへへ。お楽しみやぁ〜…。」

「嫌やわぁ。急かさんといてぇ〜。」



客は助平な顔でふらふらと布団の方へいった。

いやらしく押し倒そうとする手をうまくかわし、千汐が上になる。

そして、スッと額に手を置いた。

それからルパンに教えられた「ツボ」を刺激する。

「うっ…」という短い呻き。

客は酩酊状態に落ちていった。



「気持ちええですか…?」

「ああ…最高や…」

「旦那さん、ウチが天国に連れてったる…そうや…そのままゆ〜っくり…」



特殊な媚薬が客を催眠状態に連れて行く。

ものの2〜3分で客は眠ってしまった。

これはルパンが不二子にフラれまくっていた時に作ったという「イイ夢」が見られる薬だ。

客はこれから一晩中、夢の中で千汐を相手に痴態にふける。

今夜の仕事はこれで終わりだ。



「よく効くなぁ…大丈夫かな…」

「問題ない。最低でも8時間起きる事はないからな。」

「ちょっと…!どこから…!」



畳の上にすとん、と降りた男。

五ェ門は一部始終を隠れて見ていたようだった。

客はにやにやといやらしい寝顔ですっかり眠りこけている。

他の男が来た事はおろか何をしても起きないという。

試しに頭を思い切り蹴ってみたが、へら、と笑って見せただけだった。



「…ほらな。」

「ホント…怖いくらいだね。」

「では…『仕上げ』といくか。」

「えっ、ちょ!何…!?」

「ここは外に声が漏れる。この部屋だけ静かなのはおかしかろう?」



五ェ門は千汐を座布団の上にグッと押し倒した。

他の部屋からは女たちと客の声が遠慮なく響いている。

ヤル事をヤっている「証」の声…。

そんな中で千汐の部屋だけシンとしているのは不自然だった。

そこで…。



「そなたも鳴いてもらおうか…千汐?」

「バッ、バカ…!何考えて…!」

「そなたのゲイシャ姿…朝からムラムラして仕方がなかったのだ。食わせろ。」

「ちょ…五ェ門…!」

「名前は呼んではならぬぞ?ほら、大人しくしろ…」

「もーっ…!」




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