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□ 【第十三話】 遥かなる時代の記憶
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「じゃあ…この勾玉は有り難くもらっとくぜ、ヲワケの爺さん。」

「うむ。そなたたちの家族だけでも良い、我々の事を、どうか語り継いでくれ。」

「不二子、お前、あっちの『世界』のがいーんじゃねえのか?」

「失礼ね、次元。私そんなに空気の読めない女じゃないわ。」

「…どーだか。」

「では…オホヒコ殿も達者で。」

「はい。私は私の世界で…精一杯生きます。」

「またね!そっちの『世界』の私たちによろしく!!」



埼玉の夜の熱い風の中、ヲワケとオホヒコは去った。

残ったのは勾玉の首飾りとあの黄金の剣。

静かになった二子山古墳の周りには、ただカエルの声だけが響いていた。

暫くの間、5人はぼーっとなって空を眺めていた。

ただそこには、星空が広がっていた。



「すっげえ体験だったな…。」

「…うむ。」

「話したい事山ほどある人〜…。」

「は〜い。」

「全員挙手だね。」

「とりあえず…帰る?」

「カエルも鳴いてるしな。」



懐中電灯を手に、5人は古墳を降りようとした。

だが…

そのとき…

古墳の下から、眩い光がパッと照らした。

サーチライトの中…。

やはり、立っていたのはあの男だった。



『くおらぁあああ!!古墳の上で真夜中に何やってんだルパァ〜ン!!』

「来たぁ…。」

「とっつぁ〜ん!そんなに叫んだらご近所の皆さんに迷惑でしょ〜!!」

「逃走用のクルマは?」

「ない。資料館の自転車を失敬して『さきたま緑道』から逃げるしかないな。」

「んじゃ…行きますか。」







そして薙刀

それぞれの手に馴染んだ武器を手に、草いきれの斜面を一気に駆け下りる。

銃声

金属音

怒鳴り声…。

これがルパン一味の生き方。

「たった一つの生」の答えだ。



「いょ〜うとっつあん♪」

「ルパン貴様ぁ…!今日こそは逮捕してくれるぞ!!」

「のほほほほ♪いーよいーよ、とっつあん!あんたはそっちの方が似合ってるぜ?」

「何を…!」

「んじゃ、まったなぁ〜♪」



バリケードを組む警官隊を突破し、5人は自転車で公園の外に飛び出した。

田園地帯を貫くさきたま緑道は歩行者と自転車専用。

乗り込んでこられないパトカーから銭形が叫んでいた。



『待〜てぇ、るぱぁ〜ん!!』

「千汐!これどこまで続いてるんだ?!」

「鴻巣市の赤見台近隣公園!」

「マジかよ!!行田の街ん中じゃねーの?!」

「5キロくらいだから頑張って!!」

「このくそあちいのに5キロかよ〜〜〜!!」



カエルの声とサイレン。

オイル切れの自転車が軋む音。

空には夏の星座と流れ星。

一向に涼しくならない夏の風。

埼玉の夜は更けていった。



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