5つ目のターゲットマーク

□ 【第十三話】 遥かなる時代の記憶
5ページ/10ページ




「ここは…?」

「時間軸を縦に遡りました。この『世界』の黎明です。」

「じゃあ…古墳時代か…?」



オホヒコが5人を誘ったのは5世紀、471年頃の世界だった。

そこには広い草原が広がっていた。

周囲には武装して立つ鎧武者の群れ。

その真ん中に、2人の人物が立っていた。

北に立つのはヲワケ。

南に立つのはワカタケル。

2人の武人が、それぞれ太刀を携えて立っていた。



『ワカタケルよ。この世界はお前の手に渡す。だが、わが一族の宝は諦めてくれぬか?』

『そうはいかぬ。ヤマトノクニがクニたりえるには、あれがなければ始まらぬ。』

『偉大なるオオキミよ…それでは我が民に死ねと申すのか…。』

『この私に従わぬというのならば…な。』

『…分かった。』



ヲワケの臣下は、彼の指示で何かを持って来た。

それは、白く輝く2つの勾玉の首飾りだった。

ワカタケルはそれを受け取り、首にかけた。

ヲワケは被っていた金の宝冠を外し、その前に膝を折った。

勾玉の代わりに、彼には一本の槍が手渡された。



『そなたには我が杖刀人の首の位を与えよう。未来永劫、この土地を治め、ヤマトノクニに仕えるがよい。』

『では…我が民は、我が半身と共にサキタマノクニに連れてゆきます。』

『何…?』

『…サキタマの民は、もはやあなたの世界では生きられぬ。』

『なっ…!?』



周囲の兵のうち、青銀に輝く鎧を着た者たちがヲワケの民だった。

その後ろにはその家族である女や子供、年寄りが大勢控えていた。

彼らは皆、それぞれ一体ずつの埴輪を持っていた。

ヲワケは立ち上がり、槍で地を着いた。

すると、民は次々に埴輪を地面に置き始めた。

そして置いた者から順に…その姿が消えていった。



『これは…どうした事だ…!?』

『こうなる事は分かっていました。だから、民にはそれぞれ己の半身を用意させたのです。』

『半身だと…?』

『この世界に遺してゆく自分自身です。彼らは全て…あの世界に…。』

『な…!』



空を見たワカタケルはその場に尻餅をついた。

人々は次々に上空に見える『世界』に吸い込まれるようにして消えていった。

逆さまに映し出された『世界』はオーロラのような色彩で揺らいでいた。

人も

犬や水鳥も

そして…家も馬も

そこに1つの「埴輪」のみを遺して次々に消えていった。



『何ということか…!』



最後に残ったのは、夥しい数の埴輪の群れ。

そして、ヲワケと4人の人物だけだった。

彼らは皆、同じヒスイの指輪をしていた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ