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□ 【第十三話】 遥かなる時代の記憶
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五ェ門がハラハラしながら待っていた頃…。

案の定、千汐は心配な展開になっていた。

大宮殿の中。

そこは、千汐の嫌いな暗い場所だったのである…。



「うぇええええん!!何でまた真っ暗なのぉ〜!!??」



千汐は懐中電灯を手に、半べそをかきながら中へ進んだ。

ルパンとの通信は切れてしまった。

階段を上がった先には何もなく、ただただまっ平らな場所が広がっていた。

どっちに行ったらいいのかも分からない。

進めば進むほど不安が増すばかりだった。



「お化けとかチカンとか…出ないよね…ここ神殿だもんね…?」

「千汐殿…。」

「Σいゃあああああああ!!!ちかぁああああん!!!」

「ち、チカンではない!!拙者だ!!」

「ご、五ェ門…!?」



振り返ると、息を切らした五ェ門が立っていた。

1人で大宮殿に入った千汐を追ってきたのだという。

通信がきれてしまったため、心配してくれたのだ。



「ありがとう…私、暗いところ怖くて。」

「ルパン達は外で待っているという。代わりに拙者が来た。」

「あの…」

「どうした?」

「手…繋いでもらってもいいかな?」



差し出された手を、千汐はそっと握り返した。

気を付けなければ、五ェ門の手を痛めてしまう。

何度も2人で手を繋いで歩くうち、そうする事にも慣れていた。



「痛かったら言ってね?」

「…そんな事はござらんが…千汐殿。」

「殿はいいよ?」

「この体制は…その、いささか照れるのだが…。」



五ェ門はすっかりギクシャクしてしまっていた。

自分の知る五ェ門ではあり得ない顔…。

少し前の自分と同じだった。



「私も…最初は恥ずかしかったかな。」

「む…?」

「なんか、私の世界の五ェ門はね、それが当たり前、みたいな感じで最初から私の手を引いてくれたから。」



格好つける男が多かったせいだろうか。

千汐は五ェ門と知り合うまで恋人と手を繋いだことがなかった。

キスや身体の関係はあるのに、手だけが恋を知らなかった。

だから、新鮮だった。

初めて本当の恋を知った気がした。



「五ェ門はいつも…私を引っ張ってくれるんだよね。」

「千汐…殿…。」

「巴の家で生きることしかしか知らなかった私が広い『世界』に出られたのも五ェ門のおかげだし。だから私は…」

「千汐…!」

「あ…!」



突然、五ェ門の手が離れた。

そして、ただでさえ真っ暗な視界が遮られた。

抱きしめられた腕の中。

小さな島の洞窟…。

五ェ門に想いを告げられたあの時と同じだった。



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