5つ目のターゲットマーク
□【第七話】 炎の試練と七つの指輪
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恐らく、千汐は幼い頃からそう教育されてきたのだろう。
いずれは組長となり、巴御前の血を守る立場。
組の掟は絶対。
愛する男と一緒になる事も許されない。
その発想すらない。
母も祖母もそうしてきた巴組の女の生き方…。
千汐は自分の「宿命」に捕らわれ続けているのだ。
「初めて会ったとき…千汐はもっと広い『世界』を見たいと言っていた。」
「五ェ門…。」
「だが、あやつはまだ自分の生きてきた狭い世界に捕らわれておる…それが悔しいのだ。」
飛行機は国境を超え、イタリアに入った。
下手をすれば領空侵犯で戦闘機に撃ち落とされる危ない場所を過ぎると、イタリアの街が見えてきた。
ヴァルトゥルナンシュはスイス国境に近い場所。
2人は途中で燃料を補給するために郊外に降りた。
次元はそこで、ルパンが何を考えているかという自分の推論を自分に話した。
「奴が会いに行ったのは恐らく…ボンゴレお抱えの彫金師・タルボだ。」
「ボンゴレ…?まさかあの『ボンゴレファミリー』か?」
「ああ。考えたくねえけどな…。」
ボンゴレファミリー。
それは、裏社会、そしてマフィア界のトップに君臨する巨大組織だ。
ルパンは今まで、ボンゴレファミリーに関わることを避けてきた。
めぼしいお宝を所有していなかった、という事もある。
だが、第一の理由はあまりにも関わることがリスキーだったという事だ。
ほしいものがあればリスクなどものともしないルパン。
盗めないものなどない大怪盗。
だが、ボンゴレだけは例外とも言えた。
「ボンゴレファミリーとやり合って…下手すればあらゆる権力に存在そのものを消されちまう。オレの知り合いで行方不明の奴も…何人かは恐らくボンゴレ絡みだ。」
「諜報組織や暗殺部隊…さらには、ボスとその守護者と呼ばれる6人…いずれも得体の知れない猛者ばかりと聞く。」
「最近も、10代目の継承絡みでドンパチやったばっからしいしな。」
関わるのが嫌な相手。
お宝を所有しているターゲットではない以上、今までずっとボンゴレとは距離をとって来た。
だが、ルパンはここに来てそのボンゴレの最深部に近づく可能性があった。
「あいつ…ボンゴレお抱えのじいさんに指輪作らす気なんだ。」
「馬鹿な…指輪の職人などいくらでもいよう、それが何故ボンゴレなのだ…。」
「リスクを冒してまでそれをやる、って事は…それが今回ルパンの狙う『お宝』って事…」
その時だった。
五ェ門は何かの気配に気づき、剣を抜いた。
殺気。
とっさに斬鉄剣が斬ったのは、鎖だった。
敵襲か。
次元もマグナムを構えた。
だが、相手は1人だった。
「へぇ…ホントに強いみたいだね。」
「お主…何者だ!?」
「あなたには関係ないよ。」
立っていたのは裾の長い学ランを羽織った1人の少年。
その手には何やら紫の炎のようなものが揺らめくトンファー。
近くには、「ヒバリ、ヒバリ」と鳴く黄色い鳥が飛んでいた。
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