小説

□テイルズ学園 第9章
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「鏡なんだ僕ら互いに それぞれのカルマを映す為の 汚れた手と手で触り合って形が解る」

「はいお疲れさん。アビスチームは完璧に記憶してるなぁ。『カルマ』合格だ」

それは、ジョニーの楽しい楽しい音楽の授業。

課題でそれぞれのチームに出された歌をテストしているのだ。

今日は生徒たちの授業態度を一目見ようと、教師たちも音楽室に集結しているのだった。

「はい、次はシンフォニアチームだ。曲は『ホ・ン・トウ・ソ』」

「あ、課題あるのをすっかり忘れていました

プレセア、だいじょぶ。私がリードするから

「ボクも…、ボクも頑張るよ、プレ…プレセア」

「ありがとう、コレットさん、ジーニアス」

先生の前で決して言えない一言。
だがそんなプレセアを、コレットとジーニアスがリードしてくれるという。

「二人にとってふたりが『大切』であり続けますように ムリしてでも君の『必要』になるなら、僕が悪役(モノ)にもなる ウソをもっと、うまくつけてたら…自分の心(コト)まで誤魔化(だま)せるくらい ウソツキにさせてしまった僕が嘘(それ)を真実(ホント)にしてあげる」

「シンフォニアチーム、合格だ。よく覚えてきたな」

ジョニーが拍手すると、なぜかミトスが涙ぐむ。

「どうしたんだ?何か辛いことがあったのか?」

ジョニーがミトスに近寄って様子を見ていると、確かに小さい声で何か言っていた。
よく耳を澄ませると、ミトスはこう呟いていた。

「この曲を聴くと、姉さまを思い出すんです…」

「そ、そうか…。俺の選曲ミスだったな。悪い」

「先生のせいじゃありませんから…」

ミトスはなんとか気を取り戻し、席につく。

「その気持ちよく分かるぞ、ミトス。私もマーテルを思い出す…」

「盛り上がっているところ申し訳ないけれど、なぜ女神マーテルを思い出すのかしら?」

たまたまユアンの隣にいたリフィル。
今では普通に会話できるほど、彼女はユアンやバルバトスと和解したのだ。

「マーテルがよくこの歌を口ずさんでいたからな」

「そういう意味じゃなくて…。マーテルは女神なのでしょう?ミトスは弟だからいいけど、あなたは普通のハーフエルフ。神と会うなんてとても信じられないのよ」

ユアンに軽く呆れたリフィル。
リフィルがそれでも彼に質問を浴びせてくるのは、とても知りたいという興味を意味する。

「マーテルだって、生まれてすぐに女神などではなかった。彼女は普通のハーフエルフだったのだ。しかし、ある事件によって命を落とした。全ての命の源である『大いなる実り』を守って、な」

「つまり…『大いなる実り』を自分を犠牲に守ることによって、全ての命の危機を救った。だから救世主、女神マーテルとして崇められた。そういうことね」

「正確には犠牲にしたわけではないが…そんなところだろう」

「そう…。思い出させて悪かったわ」

会話はそれきり途切れてしまう。
やはりユアンにとっては辛い記憶だったのだろう。

「次は転入生、エクシリアチームだ。曲は『progress』」

「僕らがただ自由でいられたあの頃は遠くて 無邪気な笑顔だけじゃこの頃は過ごせないけど」

「素晴らしいな。それじゃ、エクシリアチームは自己紹介がまだみたいだから、このままやっちゃえ」

拍手と共に無理やり進めるジョニー。
しかし、授業の中で自己紹介が出来るのは好都合だ。
なぜならエクシリアチームとして、教師も生徒も一斉に紹介出来るからだ。

エクシリアチームは前に出てきて、黒板にそれぞれ自分の名を書く。

「それじゃあ僕から。僕はジュード。本当は医学生なんだけど、色々あってリーゼ・マクシアっていう世界を旅することになったんだ。それで不思議なことに、ある日目覚めたらこの世界にいて…。それでも勉強は大切だと思ったからテイルズ学園に来ました。みんな、よろしく」

「私はミラ。学園というのは初めてだし、授業を受けるのも初めてだ。初めてがたくさんで、楽しいよ。よろしくな」

「私はエリーゼ…です」

「僕はティポだよ。人見知りで、なかなかうまく喋ることが出来ないエリーゼの代わりに喋るの〜。よろしくね〜」

「やほ、みんな。あたしはレイア。テイルズ学園ってすごく広くて、総人数も多くてビックリ!仲良くしてくれると嬉しいな。よろしく」

「俺はアルヴィン。本名はアルフレドなんだが…長いから、気軽にアルヴィンって呼んでくれ。なんかさ、俺教師みたいなんだよ。まだ分からないこともあるが、よろしくな」

「私はローエンです。執事をやっているのですが、この学園だとどうやら副校長になってしまったようですね。それでもクレメンテさんが本当の校長さんですから、お間違えのないようにお願いします」

ローエンはクレメンテと同じくらいの年齢に見える。
この学園の中でも、かなりの上層だ。
もっとも、ハーフエルフなどの長寿種族は除く。

「これはたまげた。エクシリアチームは教師が二人、生徒がティポも合計して五人。テイルズ学園も増えてきたもんだ」

生徒に教師の数が足りていない。
一人で授業を持っている教師はとても苦労することになるだろう。

特にジョニーは音楽を担当しているので、苦労する。
大勢での合唱は一人一人の歌声を聴くことができないため、長所も短所もよく聴いていないとアドバイス出来ないのだ。

「(授業は週に1回と、少ないからまだいいけどな)」
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