小説
□テイルズ学園 第2章
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「よっ、相棒」
突然そっーと後ろから声を掛けられ声の主を振り向いた。
座っていたタイヤ式椅子を傾けて振り向いたため、そのまま後ろにガタンと豪快に倒れる。
「おお、ゼロスか。おはよう」
クラースも椅子には慣れたもので、何回も同じ目に遭っているのに懲りない。
「何だよ、クラース。リアクション薄くねぇか?」
「まあ…職員室の人数が増えているからな。少し暑くてな」
クラースはどうしたものか溜め息をついた。
同時にゼロスは大声で奇妙に笑う。
「でひゃひゃ。その気持ち分かるぜ。俺さま職員室が男ばっかで飽き飽きしてたところよ」
「…すると、その『男ばっか』に私も入っているということか」
「いやいやいや。はは、こりゃまた俺さまとしたことが…」
ゼロスは苦笑いを浮かべて両手を顔の前で左右に素早く動かし、その場しのぎでごまかそうとする。
実はすごく冷や汗をかいていた。
「相変わらず口が滑るな」
「ま、まあ…いいってことよ。それより、あいつらは一体…」
ゼロスは職員室を今まさに出ようとしている四人の教師を見た。
「さしずめ『仲良し四人組』と言ったところか?」
「おいおい…もっといい名前付けてやれよ」
ゼロスはクラースに嘘だろ?と言いたげに見つめた。
「あの四人…クラトス、ハロルド、ユージーン、リフィルはああやって行動しているらしい。それと『仲良し四人組』はバルバトスが始まりだ」
「なるほどな。まぁ、何してるかは知らねぇけど。バルバトスのネームセンスはあんまりじゃないか?」
「ははは…それは言えているな」
クラースは苦笑した。
彼らには不釣り合いで、あまりにも幼稚的な名前である。
「俺さま『仲良し四人組』にストーカーしちゃおうかな〜。何してんのか気になるし」
「す、ストーカー…バレたら何をされるか分かったものじゃないぞ」
「バレなきゃいいんだろ?別にリフィル様とハロルドちゃん以外の野郎には興味ねぇし」
「そ、そうか…そこまで言うなら私は止めない」
クラースは半ば諦めている顔だ。
ゼロスは女性に対して諦めが悪い。
何を言っても無駄なことは目に見えている。
「そーくると思ったぜ、クラース。んじゃ、行ってくるわ」
「あ、ああ…」
クラースは大丈夫だろうかとゼロスを見送る。
そして、『仲良し四人組』の後を追いかけているゼロスは―…
「(しっかし…リフィル様とハロルドちゃん以外は本当に会話がねぇな…)」
と、彼女たちの後をつけながらつくづく思っていたのである。
「…敵か?」
クラトスは突如立ち止まりユージーンに尋ねる。
非常事態にも対応出来るよう、剣の柄には手を掛けていた。
「そんなことはないはずだが…」
ユージーンは辺りを見渡しながら答えた。
しきりに鼻をツンと上にして匂いを嗅いでいる。
「そうか」
そう言うとクラトスたちは歩き始めた。
「(ひゃ〜、なんて気配に敏感な野郎だ)」
ゼロスは彼らに気付かれまいとトイレの個室に隠れていた。
咄嗟の行動とはいえ、彼らに不審感を抱かせなかっただろうか?