小説2

□言葉にするのは容易い、が。真のそれを表現するためにはやはり行動に出るのが俺らしいのかもしれない。
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※学園パロ。
リョウマ視点。
突然のマクカム、お許しいただきたい。


「……懲りないな」


俺の口からため息がこぼれ出てしまった。
嗚呼、ため息をつきながら机に顔を突っ伏してしまうなどなんてありがちな行動パターンなのだろう、などと自分でも呆れてみせる。
今の俺はというと。
完全に自己嫌悪に陥ってしまった。
窮屈に凝り固まってしまった心を少しでも解してやろうと腕を前方に思い切り伸ばせば。
何をしてくれる、と言わんばかりに音を立てる椅子。
その反動で俺の拳に伝わる痛み。
この椅子にまで阻まれようというのか、俺は。





不覚だった。
俺は動揺から持っていた箒を手放してしまい。
その柄が乾いた音を発したところで、二人は俺に対し一斉に振り返った。


『――リ、リョウマさんっ!?
これは、ですね……』


それは最初に二人を見掛けた時のこと。
校舎の屋上での出来事だ。
俺は日直の仕事を終え、いつもより遅く掃除に取り掛かるところだった。
最近は日差しや暑さの所為もあってそこに人気など全くない。
しかしカムイはポニーテール姿で、普段は見せないうなじに汗を一筋光らせた。
口は驚きに開いたままで。


『何をしている、カムイ。
私よりその男が気になるというのか……?』


生徒会長。
いいや、敢えてこう呼ぼう。
マークス王子がカムイと離れたばかりの自身の唇を舌でなぞる。
まだ足りない、と言いたげな彼はカムイを腰から引き寄せてその後頭部をぐいと押し。
再び接近する二つの唇――。


『兄さっ……、駄目です……!』


カムイは彼の胸を押してマークス王子を引き離す。
が今度は彼が彼女の腕を取り、その透き通るような肌に甘く噛み付いた。


『っ!』

『私のことを兄などと思うな。
それとも、身体に言い聞かせてほしいか?』

『……』



二人のことなど見ていられなかった。
俺は何も言わずに俯くカムイの姿だけを脳裏に焼け付けながら、その場を夢中で駆けた。
いや、逃げたんだ。
現実から。
常に対等な立場で張り合っていたと思っていたマークス王子から。
迫られるカムイから。
俺は何もしてやれなかった。
何もしてやれる権利など無かったんだ。
マークス王子が、ついにカムイを手に入れてしまったのだから。
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