小説2

□僕達は彼女の為に
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※学パロ。
何故かかなり初々しい仕様(笑)





「「なんで僕がっ!!」」


二人の少年の声は一音も違えずに、まるで合唱でもしてるかのように重なったのだった。
その声は放課後の教室に衝撃を放ち、周りがざわめく中口元に手が添えられひっそりと鳴りを潜めた。
――ただ一人、『彼女』に見えざる招待状を直接届けるため。





「文化祭、ですか」


カムイは黒板の中央に白く堂々と記されたその文字に、つい目を丸くしてしまう。
学園に文化祭というものはつきものであるが、しかし目の前に広がる真実をいざ目にするとなんとも言い難い気持ちが湧き出てくる。
楽しさに踊る心、そして――。


「カムイは和服が似合うに決まっている。
あの艷やかな白い肌に、常に一歩引いた姿勢っ!
そして儚げながらも誰かを信じ続ける芯の強さ。
これぞまさに白夜名物である、いや。
絶対的白夜の不動なる存在、カムイだ!!」

「……何を言う。
カムイはバニーガールの服が似合うに決まっている!
あの欠点の付け所のないナイスなスタイルに、加えて狼が追い掛けたくなる究極な愛らしさ。
これぞまさに暗夜に降り注ぐ一筋の月光、いや。
不滅的暗夜の妖艶なる存在、カムイだ!!」


ものすごく嫌な予感。
もちろん今日もその的中率は上がったわけだが。
リョウマやマークスの妹について、熱い討論が二人の間で交されていた。
その光景もなかなか見慣れたものでアクアが彼らの間に無言で立つ。
かと思えば小さく息を吐き、やがて彼らに子守歌でも聞かせるかのように歌い始めた。


すると二人は途端ににこやかな様子で握手をするではないか。
この光景を見慣れているので、皆。
敢えて。
何も言わないわけだが。


「ともかく、私達の組は仮装喫茶ということで決まりみたいだな。
私は配膳係か。
ああ、これならこなせそうだ」

「ええ。
私は客をもてなす役割だから、仮装しないといけないわ。
さあて、とりあえず包帯でもぐるぐるに巻いちゃおうかしら。
まずは服を脱」

「やめた方がいいと思うわ、カミラ。
そんなことをしたらすぐさまバックヤードに連れ込んで、視界をブラックアウトさせるから」


ヒノカとカミラはひとまず自分達の役割に不満はない様子であり。
むしろ適材適所というものだろう。
既に文化祭当日の様子を思い浮かべていた。
アクアは多少楽器も弾けるためにバックヤードで演奏を担当することに。


「あーっ、あたしは久しぶりにバイオリンの練習しなきゃ。
わーい!
アクアおねえちゃんと一緒に演奏だねっ」

「え、わっ、私……。
仮装してお客さんの前に?
はわわ……。
少し自信がありませんが、い、一生懸命頑張りますっ!」


エリーゼとサクラは二人で手を取り合う。
サクラがやや緊張している面持ちであったためか、エリーゼは彼女の親友の掌に指で『人』と書き。
そして絶対に文化祭を成功させようね、という声と共に指切りをするのだった。
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