小説2

□俺とお前が進む未来は
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※学パロ。
王族頭脳戦にてリョウマにこんな展開があったらという名のif。





「それでカムイ、答えられなかったらそれでいいんだが。
実のところ俺のことをどう見ているんだ?」


現在学生という身でありながら、その務めである勉強も放っておいて。
試験が間近に控えているというのに、彼女の心を乱すようなことを言っておいて。
なかなかに酷い質問だ、と俺は自嘲気味に鼻で笑いたくなる衝動を心の中に収める。


――答えられなかったらそれでいい?
いや、俺は本心からそう思っていない。
カムイを目前にするとどうしても彼女のことが知りたくて仕方がないから。
彼女の口から紡がれる一音一音を聞きたくて仕方がないから。
その欲望に忠実に従っていると先程のような彼女の心に踏み込んだ質問へと繋がるわけだ。
しかしそんな心の内を彼女に見せるわけにもいかず、俺は頭を垂れ彼女の心を見透かす瞳から逃れていた。


「それは……。
リョウマさんは血の繋がった兄、ですから。
たとえ恋慕の情を抱いていたとしても許される愛ではありません」


カムイは俺の頬に触れて顔を持ち上げるとその真紅の瞳と視線を合わせる。
もしや複雑な俺の心境を見抜かれるのでは、と危惧したが、彼女にそんなつもりはなかったらしい。
あくまでも兄としての俺を気に掛け、そして俺に救いの手を差し伸べている。
優しい眼差しだった。


「もしリョウマさんと血縁関係になかったとしたら、私はあなたを選んでいたでしょう。
それが答えです」


その眼差しでそんなことを言う彼女には反則という言葉がよく似合う。
無知とは時に残酷で、一方ではこんなにも至極の幸福を与えてくれる存在だ。
俺と彼女が共に過ごした日々は紛れもない真実だ。
しかし俺達の関係を『実の』きょうだいだと言い張るのならば、それは偽りの真実でしかない。


「血の繋がりがなければ、か」


あなたを選んでいた。
それは本来ならば俺から話すべきことだったのだが。
その言葉が意味するのは――。


光が目の前で待ち構えているというのにそれを逃さぬ手はない。
いや、正しくはそうではない。
俺の心には彼女を想う紅蓮が劫火の如く猛り。
身体には決して抗えぬ白き稲妻が神経を伝う。
兄としての俺は、その衝撃で理性を完全に失ってしまった。


その時に彼女に何をしたのかははっきりとは覚えていない。
ただ、これだけは言える。
俺はカムイと口付けを交わしたのだと。
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