小説2

□王族頭脳戦
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白黒学園に入学してからというもの、時が過ぎる、いや日が過ぎることなどまるであっという間だった。
身体測定やらで一日の大半を埋められた日はカムイの両国のきょうだいが言い争いをして酷かったものだ。


「身長は私の勝ちだな、リョウマ風紀委員よ」

「しかし体重では俺の方が勝っているだろう。
学園を代表するマークス生徒会長はちゃんと食っているのか?」

「なんだと?
弟のトマト好きに毎日付き合わされる私に対しての侮辱か。
おかげで寝る時さえ羊ではなくトマトを数えるようになったのだぞ!?
見知らぬ人物など全員トマトに見えるくらいだ」

「ふん。
俺も弟の味噌汁好きに日々付き合わされている。
おかげで体に味噌の匂いが染みこんでしまい、鼻がその匂い以外拒否するようになってしまったのだ。
風呂にさえ香油ではなく味噌を投入する始末だぞ!」


変な張り合いにタクミとレオンの弟組が声を揃えて言う。
兄さん、嫌なら嫌だって言いなよ、と深いため息をつきながら。
しかし今度はその少年達にどちらが兄らしく弟を励ますことが出来るかで揉め始めたようだ。


「兄様達は仲がいいのか悪いのかよく分からないな」

「そうかしら?
少なくとも何でも腹を割って話せる好敵手といった感じじゃない」


兄達の傍らではヒノカとカミラの姉組が腕を組む。
意識などしていないはずなのに二人は同じ立ち姿で、それに全く同じタイミングで腕を組む。


「持久走、辛かったね〜!
あたしなんか走ってる途中で横腹が痛くなってきちゃったよう」

「あ、それ分かります……。
一度そうなるとなかなか治らなくて、まともに走れないんですよね」


エリーゼとサクラの妹組はそれぞれハンカチや手拭いで吹き出していた汗を拭う。
そして体育館の隅で彼女達は走る練習ね、と言って駆け足をしている。


「こうなったら近日行われる試験で決着をつけるぞ」

「いいだろう。
テストなど、私達の敵ではない。
そうだろう?」

「当然だ」


カムイは二人の兄の姿に酷く不安を覚える。
が、こうなってしまっては関わらぬが吉。
彼女は手を組み、切に願った。
どうか白夜王国と暗夜王国が互いに思いやりを持った親交を深められますようにと。
アクアもカムイの隣で恐らくは歌っているのだろう、冷めた目で兄達を見守りながら口を開閉させた。


「とはいえ、私達も予めテストに対策しておく必要がありますね。
アクアさん、一緒に頑張りましょう」

「空蝉 描く夢……
記憶の双剣 揺れる 面影
惑いを切り裂いて……♪」

「現実逃避しないで下さいアクアさんっ!」


選択科目ではあるのだが、この学園では音楽科も取り扱っている。
この様子だとアクアはその得意科目で攻めてくるだろう。
彼女は音楽科以外は壊滅的な成績のようで、カムイはせめて共に前を進める仲間になろうと声を掛けたのだが。
アクアにはまだ試験という現実が見えていないようだった。
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