小説2

□王子と王女の家族団欒
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※カンナが男、女、どちらも登場します。
便宜上男は神奈、女はカンナと表記します。





「みなさん!
そろそろ時間です!」


剣聖の訓練用の木刀と槍聖の同じく訓練用の槍がぶつかり合い。
白の血族とダークブラッドの竜石が二人の身体を包み込むように輝くと。
四人の注目はとある女性に集まる。
それはある者にとっては妻であり、ある者にとっては母親である。


「父さんや神奈たちと稽古をしていると時間が過ぎていくのがあっという間だな。
見ろよ、もうこんなに日が沈んでいるぞ」


息子の一人である彼が空を見上げ、沈んでいく日に今日の稽古の様子を思い返していると。
人間の姿に戻った双子が彼の両脇に駆け寄ってきて。


「「お兄ちゃん帰ろ!!」」


彼の左手を白の血族である少年の手が。
彼の右手をダークブラッドである少女の手が。
それぞれ疲れなど吹き飛んでしまったかのように元気に両方から掴んだ。


「ああ待て、神奈とカンナ!
俺はそんなことをしなくても歩く。
今更手を繋いで歩くなんて、俺は恥ずかしいんだよ」

「だってお兄ちゃんってば稽古した後は必ず空を見上げて黙っているでしょ?」

「お兄ちゃんはいつもそういう時って何を考えてるの?
僕とカンナはねー?」

「「お母さんが作ってくれるご飯のことだよ!」」


もはや二人に手を引かれて渋々歩き出す彼。
こうなってしまっては彼らは手を離してはくれないので、一刻も早く家に戻る他はない。


「わかったわかった。
双子は息ぴったりで幸せ者だな。
その意気でたまには母さんの手伝いもしてやれよ?」

「「はーい!
シノノメお兄ちゃん!!」」


神奈はやる気満々に右手を突き上げ。
カンナは兄に甘えるようにその逞しい腕に頬を寄せた。


「きょうだいたちの仲睦まじい様子は見ていてもとても癒やされますね。
ミコト女王やスメラギ王も、私たちきょうだいのことをこんな感じで見守ってくれていたのかもしれません」

「ああ、そうだな。
最も俺たちに血の繋がりはない。
そのおかげで今や妻と夫という関係の家族になり。
お前はヒノカやタクミ、サクラと名実共にきょうだいとなれたわけだが」

「ええ。
あなたからそのことを聞いた時、私は衝撃を受けました。
けれどこれをあなたから贈られてからというもの、私は当時の衝撃に感謝しているんです。
こうしてあなたの隣にいることが出来ますから、リョウマさん」


リョウマは彼女の左手の薬指に嵌まる指輪を撫でた。
彼女は結婚してからというものそれを肌見離さずその指に嵌めている。
それは家事をする時も、温泉に入る時も。
こんなにも家族の証を大切にしてくれているのだと思うと彼の胸の内は柔らかな陽だまりのように暖かくなる。


「なあ……カムイ。
俺たちも、手を繋いで帰ろう」

「はい。
私もそうしたいと思ってました」


リョウマはカムイの右手を握った。
俺はお前が大切にするその指輪よりももっとお前のことを大切にする。
この命が絶えても守り続ける、と。
そう改めて誓いながら。
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