小説2

□僕ときみのらぶ。
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「僕……あなたのことが好きになったみたいなんだ」


ある日、彼は彼女にそう告白をした。
彼は白夜王国の王族であるきょうだいの中で唯一猜疑心が強く。
元は同じ祖国で育った彼女にも、敵国で長く過ごしたという境遇からその一面を隠すことなく覗かせていた。
しかし彼女はそれでも少年のことを弟だと認め。
『きょうだい』として弟のために姉らしいことをしてやりたいと、周りの力を借りながらも彼に尽力していた。


だからなのだろう。
彼女は言った。
姉としての自分のことを。
ようやく人並みに好きになってくれたんですね、と――。





その後、とある日。
彼らはマイキャッスルの防衛戦を終えたところで、一日分の疲れがどっと空から降ってきたかのように襲ってきた。
姿の見えぬ兵。
どこから現れぬとも限らない増援からの、施設や玉座の防衛。


「せめて姿が見えればな。
まあ僕が的を外すことはないんだけど。
気配でしかその存在を感じられない分、普段の戦より弓を射る時も集中力が必要になってくるよ」


タクミはベッドに腰掛けながら風神弓の手入れをしていた。
本当は今すぐにでも寝床に雪崩れ込みたい気分だったのだが。
二人用の寝台に一人で横たわるとその寝床の冷たさから彼女が、たまらなく人恋しくなってしまうのでやめた。
そしてその彼女はというと。


「そうですよね。
敵はそこにいると分かりますが、全体的な視野で敵の気配に意識を集中させてばかりだと戦いになりません。
その意識の切り替えも難しいところです」


彼女も疲れているはずなのに。
カムイは川で洗濯してきたばかりの衣服を籠いっぱいに背負い、マイルームの室内にそれを一人干していた。
下着を堂々と干す彼女の姿は年頃の少年には少々刺激が強く。
彼は顔を紅くしつつ俯き、そして風神弓へと再び意識を向けた。


「んしょ、と……。
まるで届きません〜!」


彼女の声にタクミは口角を上げる。
衣服の量が少なくなるにつれて後ろに手を回すも、それは宙を引っ掻くばかりで。
先程から背伸びして腕を伸ばしてみたり、腰を折って腕を伸ばしてみたりの繰り返しである。


「そんなに籠を背負って暴れられると迷惑なんだけど?
そういう時は僕を頼みなよ。
これでも君の旦那……、なんだし」


タクミは立ち上がるとカムイの背後に立った。
軽くなった籠を簡単に彼女の背から奪い取ると、今度は彼が背負う。
カムイは彼に任せきりにして手持ち無沙汰になってしまうのも申し訳なく感じられて。
改めて籠に手を伸ばす。
背伸びをして手を伸ばしたところで。


「君って、昔からこうやって僕がハッキリと言っても本気にしてくれないことがあるよね。
僕としては、もっとカムイに気持ちを受け止めてほしいところだな」


タクミはカムイの手首を掴むと、彼女の額に分かったかとでも言うように人差し指をちょんと押し付けた。

 
「告白の時を思い出してみて。
僕のことが好きなら、もっと態度で示してくれていい。
僕も……頑張るから」
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