小説2
□約束
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デジタル空間から抜けるとすぐ、息が詰まる。
周りは水。
身動きがあまりとれない。
―海だ。
もはや海に叩きつけられたという現実さえ、メルには見えなかった。
『彼』に会いたい。
その想いがある故に。
「おい、みんな生きてるよなぁ!!」
シャウトモンがすぐ水面から顔を出し、状況把握のため辺りを見渡す。
―何もない。
海以外は、何も。
「まさかど真ん中に投げ出されたのか?」
水の冷たさに思わず身震いしてしまう。
彼は震える両手を見つめると、実体がないことに気付く。
海に自分のデータを吸収されている!?
「ガオモン!メル姉!長時間ここにいると、オレたちもこの海の一部になっちまう!!だから早く行こう。な?」
焦る気持ちも抑えずに彼は叫ぶ。
しかし返事はない。
「ったく…」
もし彼女たちが海の深くへと投げ出されていたのなら見つけることは容易ではない。
おまけに雨のせいか、濁った水が入り込み見透しがかなり悪い。
それでも彼は諦めたくなかった。
あの時のように、仲間を失いたくない。
―自分のせいで運命を悪く変えたくない。
彼は再び海中に潜り、仲間の姿を探す。
信念が消えぬ、その限りまで。