小説
□テイルズ学園 第7章
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「(あれ?どうしてクラトスさんが″待っている″だなんて言うんだ?オリジンの封印されている石碑まで案内するためか?)」
スタンは自分の頭で精一杯考えるものの、真相は分からない。
「おい、スタン。早く準備しないかぁ。まさか…肝が冷えたのか?」
バルバトスが呆然としていたスタンに声をかける。
「え?あ、すいません。すぐに準備してきます」
スタンは慌ててオリジンと契約するための準備にとりかかる。
荷造りが済んだ後にバルバトスから聞いた話によると、
「オリジンは精霊の王だ。並大抵の戦力ではとても契約出来ない。よって…仲間は多い方がいい。教師やしいなが全員揃っている今がチャンス。すぐに行くことになった」
とのことだった。
だが、いざオリジンの森に集合してみると…
「しいな以外にもたくさんの生徒が準備してるじゃん…」
スタンの視界にはしいな以外にたくさんの生徒が映った。
たくさんというより、全員だ。
生徒たちは精霊との契約がどんなものなのか、好奇心に惹かれて来たらしい。
ちゃっかり校長のクレメンテもフィリアの剣…ソーディアンとして来ている。
「まあ…外部の者が学園に入れないように一番強力な結界を張ったから問題ないが、あまり長くはもたない」
とユアンがため息混じりに忠告する。
「しいな、頑張れよ。危なくなったら俺が全力で守ってやるからさ」
「ロイド…ありがとう…」
しいなが顔を赤くしているとゼロスが「ヒューヒュー」と口笛を鳴らす。
すぐにしいなの鉄拳が入れられた。
ゼロスは声もなく気絶した。
「クラースさん、僕たちにも出来ることがあったら言ってください。全力で協力させてもらいますよ」
「ああ、そうさせてもらう」
クラースは緊張を払うようにクレスの肩を軽く叩いて微笑む。
クレスはよく分からないうちに叩かれて頭を傾げていた。
「子供の遠足ではないのだがな…」
クラトスは契約のために森に来た彼らの声と気配、そして姿を感じとった。
オリジンの封印されている石碑は森の最深部と言っていいほど深いところにある。
そこにクラトスはいた。
「心配なのか?彼らが我と契約出来るのか」
オリジンの声は地と空に響く。
精霊の王は今はまだ姿を現していない。
だが会話は可能である。
「…私は契約が成功する方に賭ける」
「ならばなおさらだ。本気で契約をさせたいのなら手加減は許されない。ただし、生徒は目標にするな」
「あなたは慈悲深いな…」
オリジンとクラトスの会話はそれきり終わってしまった。
「こういう日に限って霧が出てきた…」
急に出てきた霧をスタンは迷惑そうに払う。
もう周りにいた生徒たちは見えなく、声だけが聞こえる状態だ。
「(とにかく、今は真っ直ぐ歩こう。みんなもこの霧じゃあそうすることしか出来ないはずだからな。しばらく歩いていたら合流出来るはずだ)」
スタンはひたすら真っ直ぐに進む。
仲間と合流することを信じて真っ直ぐに。
霧が深いせいで何度も木の根に引っかかっては転んだ。
「見ろ、スタン。霧が晴れてきたぞ」
スタンの剣、ディムロスはそう指摘する。
確かに霧は晴れて、いい見晴らしだ。
そこに大量のヒト…教師は生徒が集まり、絶句していた。
「どうしたんだよ、みんな?」
スタンがたまたま近くに居合わせたクレスに問いかける。
するとクレスは奥の方を指差した。
スタンがその先に視線を向ける。
「…オリジンと契約したくば、私を倒してからだ」
クラトスが剣を抜き、クラースの首に突き立てていた。
クラースは冷や汗を流す。
「クラトスさん!」
スタンはクラースとクラトスの間に割って入るとクラースを後ろにかばう。
「おかしいと思っていたけど…どうして戦う必要があるんですか!仲間同士で戦うなんて馬鹿げてる!あなたも分かっているでしょう!?」
しかしクラトスはまるで言葉が聞こえていないかのように無表情だ。
「確かにオリジンとは契約したい。でも、そのためにあなたを倒さなければいけないなんて…」
「私を倒さなければ契約は実現しない。オリジンも協力出来ない。…それでいいのか?」
クラトスは剣をスタンに向ける。
躊躇はないようだ。
「スタン、この男には何を言っても無駄だ。契約をやめるか果たすか、どちらかに一つ…そういうことだ」
ディムロスは厳しくスタンに促す。
「だけど…そんなことって…!」
スタンはあまりのショックに握っていた剣を、ディムロスを地に落としてしまう。