小説

□テイルズ学園 第7章
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「そういうことです。幸いにもディストはこの情報を知らない。…ということは、ダテ学の方々も知らない、というわけです」

ジェイドはレプリカの肩を軽く叩いてやる。
するとレプリカは気絶(機能停止)から覚めて起き上がる。

「この方法なら、例えレプリカ軍団が来ても隙をついて対処出来るな」

リーガルはレプリカに対して哀れみを心のどこかで感じていたのだった。

「ええ。ただ、レプリカも立派なヒトです。戦うことはなるべく避けたい…そう思っているのでは?リーガル」

「…そう思っているが、贅沢も言ってられない。時に必要であれば、私は戦う」

ジェイドはリーガルの目から察した。
彼が本気だということを。
揺るがない光が瞳に宿っていた。

「…あなたのように強い人が世界に溢れればいいと、つくづく思いますよ」

ジェイドの目はどこか悲しげに、そして羨ましそうにリーガルの姿を捉えていた。

「さて、肝心なレプリカの説明がまだでしたね。…レプリカはあるヒトの代わりとも言える、いわば″何も知らない人形″です。そして、彼らは″望んで″生まれる命ではなく、″造られて″生まれる命です。
救いようのない彼らは、ただ命令に従う兵器でもある。なんとも虚しい存在です」

ジェイドはルークを頭に思い描く。
今でこそ元気に生活しているが、彼も人形と呼ばれるレプリカの一人。
しかし、彼は周りの者から多くを学び、多くを知ることができた。
そんなことから、レプリカはただの人形でないことが最近判明した。
…少なくともルークは。

「…ジェイド」

クラトスはジェイドに指で合図した。
ジェイドとクラトスしか知らない天使言語の手話で。
ちなみに天使言語は広く知れ渡っているものの、その手話まで理解している者はごくわずかである。
″そのことに関しては抜かりなく調査してきた。あとで話を聞いてくれ″と。
ジェイドは微かに頷き、視線をユージーンに戻す。

「以上です。ご理解いただけましたか?」

「ああ。ありがとう」

教師はまたレプリカについて理解した。
そして彼らがまばたきをして目を閉じた瞬間、本物クラトスは姿を消した。

「…ちなみにアレはどういうマジックなんだ?」

クラースが手元の本をすごい勢いでめくる。
本のタイトルは″驚愕!怪奇現象″だ。
…ついでに、クラトスが一瞬で消えるのは怪奇現象ではない。

「魔回廊を使えば可能かもしれない。魔回廊というのは移動手段の一つのはずだからな。だが、あんな一瞬で発動できるものなのか?」

クラースの言葉にジェイドはハッキリと黒い笑みを浮かべた。

「ジェイド、お前絶対に知っているだろ」

「いいえ?これっぽっちも、1%も、1mmも知りませんよ〜?」

「嘘っぽいな…」

「いいえ。知らないのは事実です。しかし魔回廊の一種だと思います。彼が魔回廊の研究をしていましたからこそ、使えるものかもしれませんし」

ジェイドは赤い瞳に映していた。
クラトスが消える瞬間を。
だが、仕組みはよく分からなかった。

「もしかすると。」

リフィルは対クラトス用に腐ったトマトを常備している。
それを彼が消えた方向に投げる。
…だがトマトは床に落ちた。

「時間が経過しすぎているからダメなのね、クラトス」

とそっと呟いた。
すると彼が一瞬で姿を現す。

「…そうだとしても、トマトを投げられるのは勘弁だがな」

彼は荷物を忘れていたそうで、それを抱えるとまた一瞬で消える。
リフィルがすかさず消えた所にトマトを投げつける。
…ほどなくトマトに精神的なダメージを受けたクラトスの声が聞こえた。

「やっぱり、そういうことなのね。あれも魔回廊の一種なのよ。一瞬で発動するものだから使用者がただ消えるだけに見えるけれども」

リフィルがそう言って微笑む行動に誰もが肝を冷やしたらしい。
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