小説
□テイルズ学園 第7章
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「他に質問がある者、挙手を願う」
ユアンが静かに呼びかける。
すると次はリカルドが挙手をする。
「質問じゃないが…俺たちのこと、教えた方がいいのではないか?」
リカルドの言葉にバルバトスが、ユアンが、クラトスが頷く。
…そしてレイヴンも。
「俺たちはぁ…元ダテ学教師だ。俺とユアンとクラトスはともかく、リカルドまでは知らなかったはず。そして、レイヴン…は俺たちも初耳だなぁ」
バルバトスとユアン、リカルドはレイヴンを意外そうに見つめた。
「おっさんさ、前とは変わったの。過去の…シュヴァーンとしての自分と決着をつけるために」
彼の言葉に、しばしの沈黙が続く。
沈黙を破ったのはユアンだった。
「過去の自分と決着をつける…か。私にも思い当たる節はあるがな」
そう言って普通の剣を少しだけ抜く。
彼がその剣から思い出すのは、ある人物と幾度も戦ったことだ。
「ダテ学の人は、過去と決別がしたいからこのテイルズ学園に来て、自分たちにやれることをやっているんだ」
スタンが元ダテ学のメンバーを見渡す。
彼らは黙ってスタンの話に耳を傾けていた。
「ダテ学は…″自分たち以外のヒトを根絶やしにして、世界平和にする″という目標があった。ユアンさんたちも、それしかないと判断して多くのヒトを手にかけた。今ではそれを後悔している…違いますか?」
「罪は罪。俺たちがヒトを手にかけたという事実に変わりはない。でも、自分に出来ることを探して行動しているというのは間違いじゃないかも」
レイヴンは微笑む。
「…我々がこの学園に来た…いや、逃げて来たせいで多くの者を危険にさらしているのも事実だ。ダテ学の件に関しては我々が処置すべきでは?」
旅から帰ってきて早々に厳しいクラトス。
「何言ってるんですか。俺たちは仲間です。あなた達の問題は俺たちの問題でもある、そういうことですよ。もっと頼ってください」
スタンが元ダテ学の者たちに笑顔をむけるが、少しぎこちない。
「素直に言え。ダテ学と戦うことになるのが怖いと」
バルバトスがいつにもなく真剣な眼差しでスタンを一瞥した。
「あ、あはは…。ほら、それより質問でしょ?誰か〜、いないですか?」
「勝手に指揮をとるな」
と言いつつ、バルバトスはスタンのごまかし笑いには気付いていた。
「レプリカについて、詳しく聞かせてほしいのだが」
ユージーンがユアンの隣に座っていたレプリカを一瞥する。
彼にはなぜ浅い斬り傷があるのか?
おそらくはユアンと戦ったのではないかと予測できる。
「それについては私の専門ですね」
ユージーンの要望にはジェイドが名を挙げた。
「元々…レプリカは私が発案したものですから。それにダテ学でレプリカ製造を行っているディストにレプリカのことを教えたのは私ですから。レプリカのツケに関しては私がとりましょう。まずは96103-A、こちらに来てください」
ジェイドが96103-Aと呼んだ者は静かに頷くと、レプリカの発案者と並ぶ。
「何をするつもりだ?」
リーガルの中に微かな不安が生まれる。
レプリカといえど、生きている″ヒト″なのだ。
「まあ見ていてください。96103-A(クラトス•アウリオン)は私が製造した中でもトップレベルのレプリカです。より本物に近いのですから。やはり本物よりは機動力や力などが劣化していますが、あまり大差はありません。ですが…レプリカには共通の弱点があります。それをお見せしましょう」
ジェイドはあらかじめ用意していた試験管…塩酸をレプリカに持たせる。
…はずだったが、わざとレプリカの顔にそれをかけた。
「…一時機能停止…」
レプリカはその場に倒れる。
まるで魂を抜かれたかのように。
「なるほど。レプリカは酸性の液体の弱いのね。でも完全に倒すわけじゃなくて、一時的に機能を停止させるだけみたい」
「…(レプリカと間違えて酸性の液体をかけられそうだ…)」
ハロルドは新たな発見を前に喜んでいる。
本物のクラトスは複雑だったが。