小説

□テイルズ学園 第3章
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クラースは図書室に行っても無駄だと判断し、校長室へ向かうことにした。

『トントン』とノックをし校長の返事を聞いてから扉を開く。

クラースは中に入り扉を閉めてから帽子を外し、校長に一礼してから真正面に立つ。

「いきなり申し訳ありません。どうしてもお尋ねしたいことがありまして」

「おお、何じゃ?」

校長は執務中であったにも関わらず、ペンを机に置き椅子に座ったままでクラースを見上げる。

「本校では何故、魔物の襲来が一度たりとも起こらないのでしょうか?隣村の近辺では沢山の魔物が出現しているのに…」

ほう、と校長はヒゲを撫でた。
どうやら答えの言葉に迷っているらしい。

「そうじゃのう…『聖域』という特別な空間を作りだしているおかげじゃ」

「『聖域』…ならばその空間の範囲を広げ、魔物を壊滅させればいいのでは?」

「うむ…そうしたいのは山々じゃが、聖域は簡単に言えば粋護陣の集合体みたいなものでの。上級技のため扱いが難しく、この学園にしか作りだせなくてのう」

そんな事実は初耳だ。
なぜ仲間同士、こんな隠し事をする必要がある?
それに、学園にしか作り出さないということは―…

「…村を見捨てるのですか?」

「そういうわけではない。あの近辺の魔物はめったに人々を襲うことはないが、まれに事件があったら困るからの。傭兵のリカルドとクラトスには交代で魔物の監視をさせているのじゃ。いざというときには魔物討伐を頼んでいるしのう」

「これは…申し訳ありません。とんだ無礼を申してしまいました」

そんな情報すら自分には回ってこない。
やはり校長は何かを隠しているに違いない。

「いいのじゃ。公(おおやけ)に発表しないわしも悪いのじゃからな」

クラースは校長に礼を述べてから一礼し、帽子を被り退室する。
そして静かに扉を閉じる。

校長との話で疑問に思う点がいくつかあったが、詮索はしなかった。
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