小説
□テイルズ学園 第3章
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「リフィルか」
「なにかと賑やかなのが苦手なのよ」
彼女は溜め息を一つつく。
苦労しているらしいことは一目で分かる。
「だな。休日の食堂は静かで過ごしやすい」
「…せっかくだし、隣にいいかしら?」
「ああ。一人じゃ寂しいだろ?」
「ありがとう」
リフィルはクラースと向き合う形で席についた。
クラースはカフェオレを飲みながら難しい数学書を読む。いずれ授業で勉強するため、自分でも復習をしている。
しかし、せっかくリフィルがいるのだから会話をすることにした。
「リフィル、突然だが…15年前はすまなかったな」
「15年前?」
「私はリフィルを嫌っていた。ただ、ハーフエルフというだけでな…」
「そのことね…」
リフィルはコーヒーをどこか寂しげに飲んでいる。
「人間と違って、魔術を使えるのが羨ましかった。だが、今は違う。
たとえハーフエルフであろうとヒトであることに変わりない。だからこうして素直に会話できる。
もう君は、私にとって大切な仲間だ」
「その言葉を聞いて安心したわ。ハーフエルフは差別に苦しむ種族だから」
「私もできる限りその差別がなくす努力をするさ。
差別というのは人々の心から始まる。そして意味もなく嫌うようになる。
私が言うべきではないかもしれんがそれは許せない」
彼の代わり映えに何かを感じ取ったのか、リフィルもまた目に覚悟のようなものを宿していた。
「…いつかはあなたのような人を増やすために、差別根絶の旅をしようと思っているの」
「苦しい旅だぞ。精神的にも肉体的にも痛むし、ましてや相手にしてもらえないかもしれん」
クラースの言葉に彼女は強く頷く。
「でも私は前を向くわ。この命がある限り、差別根絶へと未来を動かしてみせるわ」
彼女の揺るがない決意にクラースは頑張れと微笑みで返すしかなかった。
それが自分にとっての精一杯の応援なのだ。
「…するとお前さんも世界中を回り、10年の月日を費やすのか?」
「場合によってはもっとかもしれない。私はどこでも行けるわけではないの。…道中ハーフエルフを嫌う者に襲われる可能性だって考えられるわ」
「だったら、傭兵を雇えばいい。旅をするならお守り役が必要だ」
そこでリフィルはため息をついて視線を床に落とす。
「ハーフエルフなど、差別されている種族の依頼を受ける傭兵は少ないの。お守りとしての危険性がかなり高いから…」
「何言っているんだ。この学園にはとびきりの傭兵がいるじゃないか。私たちの仲間が」
クラースがそう言うと、沈黙が流れた。
彼が何か悪いことでも言っただろうかと疑問に思っているとリフィルが向き直って言った。
「クラトスやリカルドのことかしら」
「察しのとおり。彼らはかなりの腕だ。それに種族なんて関係なく、誰でも引き受けてくれるだろう?」
クラースがそう言うと、リフィルは微かに微笑んだ。