小説
□テイルズ学園 第3章
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「あら、私のことを嫌っていた割には気遣ってくれるのね」
「…皮肉はいいとして。私はそろそろ退散させてもらう。用事があるからな」
「今朝はアドバイスありがとう」
「ああ。ではな」
クラースは荷物をまとめると早々に立ち去った。
そして学園の隣の村へとやってきた。
彼はそのまま村の森に入って行った。
その森は自然豊かで動物たちが走り抜ける。
「精霊の王、オリジン…」
オリジンが封印されているという森は厳格な雰囲気を漂わせている。
なにしろ、人々に姿を現すことのない精霊の王の封印場所なのだから。
「我が声に応えてくれ、オリジン。あなたが存在しているこの世界では、差別に苦しむ人々がいる。彼らを差別から解放する方法を伝授いただきたい」
クラースは必死にオリジンが封印されているという石碑に語りかけたが、反応はない。
「…無駄だ。いくらやってもな」
クラースが後ろを振り返ると男性が歩いてきた。
確かこの男の名は―、
「ドジッ子、ドM、ドアホの略して3Dユアン!」
「…こんな状況でよくそんなことを言えるな。微妙に傷つく。そして私はちゃんと立体だ。3Dなのは当たり前だろう」
「その3Dじゃないし…」
クラースはユアンを適当にあしらうと、オリジンの封印されている石碑に向き直った。
「オリジンは眠りについている。呼びかけても無駄なのだ」
「どうにか封印を解けないのか?私はオリジンの力を借り、差別のない世界にしたい」
「…私は封印を解く方法を知っているが、我が友の命が消えることになる」
ユアンはマントを翻し、クラースに背中を向けた。
「…なに?」
「嘘は言っていない。マナの照射…すなわち、マナそのものを捧げなければならんのだ」
「…マナの照射はマナの機能そのものを失う。つまり命を失うということか?」
クラースの言葉にユアンが頷く。
「その通りだ。それでもオリジンの封印を解け、と言えるのか?」
「………」
「我らの手で差別を根絶するしかあるまい。
それにオリジンは人々に絶望し、我らの声に傾ける耳すら持っていない。いるとすれば封印を解くことが可能な我が友のみ」
「…オリジンに頼るのはやめよう。せっかく命があるなら、差別をなくすために動かなくてはな」
「そういうことだ。では、私は帰る」
ユアンが歩きだした瞬間、クラースが待てと止めた。
ユアンは彼に背を向けたままで続きを待った。
「お前、何のためにここへ来た?」
「…オリジンに頼る光景が気に食わなかっただけだ」
それだけ言うと、ユアンは立ち去った。