小説

□テイルズ学園 第2章
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「…先生、何をやっているんだ」

背後から聞き慣れた声が囁くように尋ねた。
振り返ってみると、そこにはヴェイグがいた。

「おお、なんとか君おはよう。相変わらず今日もいい天気だな〜、でっひゃひゃっ」

ゼロスは冷や汗をかなりかいており、それを懸命に拭っている。

「…オレはヴェイグだ。何かあったのか?」

「はは…お前も首を突っ込むつもりか?やめときな。これは大人の男限定のロマンだからよ」

「(…ろまん?)」

ヴェイグは頭の中でゼロスが言っているロマンを思い浮かべるが全然見えない。

当たり前だ。
彼はゼロスとは正反対の、純粋な青年なのだから。

「じゃーな!」

「…先生、どういう意味だ?」

ゼロスの耳に質問は届いていなかった。

彼はトイレを後にし、早速ストーカーもとい追尾を再開した。

「(リフィル様、ハロルドちゃん、何か俺さまに癒やしをくれ!)」

ゼロスの思いを受け止めたかのように、女性二人は楽しく語りだした。

「ねぇ、今度温泉にでも行かない?」

ハロルドはリフィルに笑ってみせる。

彼女たちは旨がよく合うために休日でも度々二人でいるところを目撃できる。

「温泉…そうね、仕事ばかりでは煮えたぎるものね。その話、乗るわ」

「やった!」

ハロルドはかなりご機嫌だが『あ、』という口の形をさせた。
どうやら何か思い出したらしい。

「そういえばそこの温泉は混浴だったような…」

「この辺にそんな温泉があったなんて、初耳だわ」

リフィルは腕組みをしながら話を続けた。
一つ考えられることは―…

「…嫌な予感がしないでもないけれど」

「どこかのスケベとか?」

ええと彼女は呆れたように頷いた。

「(はーいはーい、どこかのスケベ、ゼロス・ワイルダーでーす)」

ゼロスは心の中で名乗りを挙げていた。
しかし、周りを見るとどうも様子が変だ。
―何かが足りない。

「(そうか…野郎たちがいなくなりやがったな。こいつはストーカーの大チャンスだぜ)」

ゼロスが機嫌よく歩いていると、渋い声が聞こえた。

「止まれ」

渋い声の男性はゼロスのすぐ背後にいた。
こんなに近くにいたのに、気づかなかったとは…。
観念してゼロスは立ち止まった。

「何だよ?俺さま急いでるんだけど」

振り返った瞬間、ゼロスは声を失った。
なんとそこには―。

「俺はユージーン・ガラルドだ。よろしくな…と言いたいところだが、ストーカーとは感心しないな。ゼロス・ワイルダー」

「あれ?俺さまを知ってたってか。つーか、いつから俺さまをストーカーしてたんだよ?」

「ストーカー?…尾行と言ってもらおう」

「(結局はストーカーと同じじゃんかよ)」

ゼロスは心の中で突っ込みを入れる。
実際に口に出すとおそらくユージーンの鉄拳を喰らっていたところだろう。
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