【シュンちゃん】
「ねえ先輩は兄ちゃんのどこが好きなの?」
「唐突だね。シュンちゃん…」
そういって先輩は俺んちのソファーによしかかった。
まだ兄ちゃんは帰ってきていない。
だから前から知りたかったことを聞いてみた。
「だって先輩兄ちゃんのこと好きそうじゃなかったし、どっちかっていうと俺と仲良くしてくれてたから意外だったもん」
「ありゃ、それは私がシュンちゃんを選ばなかったことを怒ってるの?」
「いや、選ぶ選ばないの問題じゃなくって、まぁ俺的には今まで通り先輩が俺んちに遊びに来てくれるのが嬉しいからいいんだけどね!」
まぁ正直言って俺も先輩のこと好きだったから兄ちゃんのことずるいと思ったこともあるけど、今思えば前と同じように接してくれる先輩が一番苦労してたんじゃないかと思う。
俺と兄ちゃんと板挟みにされてて結構苦労したんじゃないかな?
「で、なんで兄ちゃんにしたの?俺にも聞く権利あるよ」
「うーん…なんか改めて言うの恥ずかしいなー…」
少し溜めてから深呼吸をして「実は…」と続ける先輩。
やっと聞けるのかと他人事の為かすごいわくわくした。
「実はね、私、可哀想な人の方が好きなの」
「……え、」
突然の発言に続く言葉が見つからない。
どうコメントしていいやら……
「正直言ってシュンちゃんも好きだったよ?でもそれは隆也の弟としてっていう意味で、あ、でも後輩としても大好きだよ!でも、なんか日頃から隆也を見てるとホントつくづくコミュニケーション能力に欠けるなとか、友達いるのかとか、隆さんにもからかわれ過ぎだし、もうホント可哀想でかわいいの!!」
いつの間にか始まった先輩のマシンガントークは俺の頭の中からフェードアウトしていく。
先輩ホントに兄ちゃんのこと好きなのかな……
いろんな愛情が世の中にはたくさんあるんだと俺は少し大人になった気がした。