Yuki short

□*0cm*
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〜〜0cm〜〜






「せんせー触っていい?」



準備室を掃除していたアイツが机の上を片付けている俺に向かってそう言ってきた。


…何に触るんだ?


ふと疑問に思いつつも、そこらにあるなんかだろ?とロクにアイツを見ずに返事をした。




「ああ、いいぞー」



俺がそう答えると……




「…ホント!?」



という声とともに……





ぼんっ!




俺の背中に軽い衝撃が走る。




「うわっ…!な、なんだ!?」




慌てて背中を見ると、アイツが俺に抱きついてきやがった。



…おいおい。ちょっと待て……

わけがわからずなぜか焦る俺。

…いったいどういうことだ!?




「…0cm……」




俺の体に腕を巻きつけ小さな声でそう呟いたのが聞こえる。




「0cm?」




その数字に疑問を持って問いかける。




「…あ……えっと…な…ないしょです…」




そう言って、慌てたように急に巻きつけた手を外し俺との距離をとった。


今起こった行動がどうにも理解できない俺。




何が起こったんだ?


っていうか……抱きつかれたのか?




思わず固まったようにまだ焦ってるアイツを見つめると……





「……0cmになりたくて……」




「…え?」




まだ疑問に思ったままの俺に、観念したのかぼそぼそと打ち明けはじめた。







「…これがね、いつものせんせーとの距離…でね。50cmかな?って思ってて…」



「!」



「……でね。いつかね、0cmになるのがね、夢で……」




……ああ、そういうこと?
理解できた俺がニヤリとアイツを見て笑う。

それに気づかないアイツはまだそのまま打ち明けていく。




「で、急にどうしても0cmにしたいな…って思ったら……」



「……思わず背中から突撃したってわけだ」



「………ハイ……そうです…ビックリさせてごめんなさい」






全てを理解した俺は、目の前で焦ってるこいつを見るのが面白くて……



可愛くて……




……愛しくて…







だから、ついついからかったんだ。






「0cmでいいのか?」



「……え?」




何のことかわからない…という顔で俺を見つめるアイツに近づき、指で顎を上にあげて、俺を見つめさせる。



「……舌出してみろ」



といって、アイツを見ながら俺も舌を出した…




ら、、



全てを理解したのか、みるみる顔が真っ赤になる。




「……い、いや、あの…あの……」




どんどん焦るアイツを見るのが面白く、そのまま顔を近づけると……





ギュッ…と目を瞑ったかと思うと……






「……し、しつれいしま…」




慌てて俺から離れていこうとするから、思わずその腕を掴んだ。




「…これで0cmだな」




ニヤリと笑う俺にバツが悪そうなアイツ。




「…同じ0cmなら、背中に突撃しなくても、握手とかでよくね?」




もっと真っ赤になる顔を見ていたら、さすがにこれ以上からかうのも悪い気がしてきたが……

慌てぶりを見ているのは楽しくて、可愛くて…


やっぱり……愛しくて…





そのままそっと腕を引き寄せて抱きしめる。



慌てていたのが落ち着いて俺へもたれかかるように身体を預けてきて…


そっと耳元へ囁いた。





「いつかもっとマイナスに挑戦するか?」





意味がわからないんだろう。

大きな目を見開くその顔が愛しくて……







最初のマイナスはきっともうすぐ…



























end

2013.4.26

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